7月26日、言論NPOと中国国際戦略研究基金会は、東京都内で「日中安全保障会議」を開催し、「北東アジアの危機管理はどのようになされているのか」をテーマに議論を行いました。
日本からは、言論NPO代表の工藤泰志に加え、太田文雄氏(元防衛省情報本部長・海将)、小野田治氏(株式会社東芝インフラシステムソリューション顧問、元自衛隊航空教育集団司令官・空将)、阪田恭代氏(神田外語大学教授)の4名が参加。中国側からは、楊超英氏(中国国際戦略研究基金会副理事長)や張沱生氏(同学術委員会主任)など7名が参加しました。
議論に先立ち、日本側を代表して開会挨拶をした工藤は、この「日中安全保障会議」の目的が「日中平和友好条約の理念を具体化すること」であることの再確認を求めると同時に、「10月開催の『第15回 東京-北京フォーラム』、そして来年に開催を予定している多国間会議にもつながっていくような議論をしてほしい」と居並ぶ出席者に呼びかけました。
中国側を代表して挨拶に登壇した楊超英氏は、中国国際戦略研究基金会は同日午前中に、日本の政府系シンクタンクとも対話を行ってきたことを紹介しつつ、そこではアジア太平洋の戦略環境や双方の安全保障政策についての意見交換は行ったものの、この地域の平和秩序に最も大きな影響を及ぼす危険性のある米中対立についてまでは議論に至らなかった、と説明。そのため、今回の会議が第1セッションで米中対立をテーマとして取り上げていることを「非常に時宜を得たもの」とし、意気込みを語りました。
引き続いて行われた第1セッションでは、「米中対立の影響と米中の危機管理の状況について」をテーマとして議論が行われました。このセッションでは、中国国際戦略研究基金会が米国カーネギー国際平和基金との間で行ってきた米中の危機管理に関する協議結果について、中国側から報告がなされた後、米中対立はこの地域の平和にどのような影響を与えているのか、対立が軍事衝突にまでエスカレートしないようにするために、どのような危機管理メカニズムを構築すべきか、といった点について意見交換が行われました。
次の第2セッションでは、「日中が北東アジアの平和で背負っている課題」をテーマに議論しました。ここでは、日本側から日中の海空連絡メカニズムの現状と課題や、北朝鮮問題及びイランなど他のホットスポットに今後どう対応していくべきか、などの点について基調報告がなされた後、連絡メカニズムがきちんと機能するためには何をすべきか、日中間のみならずアジア全域の平和を確保するためにいかなるメカニズムを構築すべきか、といった点について議論が展開されました。
3時間を超える議論の後、工藤は北東アジアにおいて平和メカニズムをつくるために日中両国が動き出さなければならない時期に来ているとの認識を示しつつ、そこでの懸念要素として「中国のビジョンが分からない」ことを指摘。その懸念を払拭するためにも対話を続けて相互理解を深める必要があると語りました。また、「平和と発展のための友好協力パートナーシップの構築に関する日中共同宣言」の中に「両国がアジア地域及び世界に影響力を有する国家として、平和を守り、発展を促していく上で重要な責任を負っている」と記されているにもかかわらず、そのプロセスが進まないのであれば「民間が進めるしかない」とも語り、今後の取り組みへの強い意欲を示しました。
楊超英氏も、"官"である政府系シンクタンクと比較して"民"である言論NPOとは「率直な意見交換ができた」と民間対話の意義を強調。さらに、同じような内容の対話でも何度でも積み重ねることが真の相互理解につながるとし、次回北京開催の「日中安全保障会議」での再会を日本側に呼びかけ、議論を締めくくりました。