世界が最も注目した先の米大統領選挙結果について、言論NPO代表の工藤泰志は、世界の主要シンクタンク代表者と共に「バイデンと世界:米大統領選への世界の見方(Biden and the World: Global Perspectives on the U.S. Presidential Election) 」と題した米外交問題評議会(CFR)の企画にコメントを寄稿しました。
日本の多くの人々は、2020年の米国大統領選挙は民主主義の概念そのものを試すものであると考えている。
ジョー・バイデン氏の勝利により、日本政府は希望を失わずに済んだのかもしれない。過去数年間における日本の外交努力は、安倍晋三前首相とドナルド・トランプ大統領との個人的な関係によって支えられてきた。しかし、 現政府には安倍元首相のようにトランプ大統領と上手く付き合いながら物事を進められることができる人がいないことを考えると、今回の選挙結果は日本政府が直面するはずであった課題を解消したのかもしれない。
バイデン氏勝利の選挙結果で、止まっていた国際協調への努力が、日米で動き出す可能性が高い。その理由として、第一にバイデン氏が多国間協調を支持している点。そして、第二に9月に実施された言論NPOの世論調査では、日本国民の70%以上が、世界的な分断を回避することを望み、国際協調を支持していることがわかった点も同様に重要である。
また、自由貿易や感染症、気候変動でも、バイデン氏の行動を日本が支持し、足並みを揃える可能性は高い。日米同盟を、世界の自由と民主主義の価値に基づく同盟としての役割を強化すると同時に、ルールベースでの世界の自由秩序を守るためには、TPPへの復帰に米国が踏み切ることが、流れを変えるはずだ。
言論NPO理事長 工藤泰志
原文は、米外交問題評議会のウェブサイトにて公開しています。