第16回「東京-北京フォーラム」共同声明
 ― 東京コンセンサス ―

2020年12月01日

 「第16回東京―北京フォーラム」は11月30日から2日間にわたって東京と北京を結ぶ初めてのオンライン会議方式で行われ、日中両国を代表する政治外交、経済、貿易、安全保障、メディア、感染、デジタル経済などの有識者約100氏が集まり、不安定化する世界の中での日中関係に焦点をあて、アジアの平和や世界経済の安定化に対して、両国がどのような役割を果たすべきか真剣に向かい合った。

 世界は新型コロナウイルスの感染の封じ込めに未だ成功しておらず、世界経済の保護主義や分極化への動き、さらにはアジアの平和で不安が高まっている。私たちが懸念するのは、国際秩序に全面的な変化が起きているにも関わらず、国際協力の動きが進まず、世界が内向きになっていることである。

 この点で私たちが注目したのは、今年の日中世論調査である。同調査では日中両国民の7割以上が、今まさに世界で大きく揺らいでいる「国際協調」が必要だと考え、半数はこの北東アジアに必要な原則は「平和共存」だと回答している。
 私たちに問われているのは、こうした日中両国の民意を誰が背負うのか、ということにある。

私たちは「民間の外交」には政府間の困難を乗り越え、新しい協力の土台を作る特別の役割があると考えている。過去16年間、日中両国が厳しい困難に直面する中でも一度も中断せずに対話を継続したのは、こうした覚悟をフォーラムの参加者が共有していたからである。

 私たちはこうした強い思いから、この二日間真剣に議論を行い、以下の合意をまとめた。


 日中関係が重要なのは、日中両国が隣国であり経済大国であることだけではない。両国の経済や産業はすでに相互依存を高め、多くの共通利益を持っている。さらに両国の協力は、アジアの平和と発展のためにも不可欠である。世界やアジアが不安定な局面にあるからこそ、両国は世界経済の安定的な発展と東アジアの紛争回避のために強い協力関係を構築すべきである。そのための幅広い議論を開始すべきである。

 日中両国は交流を深め、新型コロナの感染封じ込めや経済復興でお互いの経験と成果を幅広く共有するとともに、ファーストトラックで始まった国境を越えた人の移動と防疫を成功させるためにまず原則とルールを共有化し、それを広域に広げる努力を行う。ワクチンの公平な普及、途上国の感染対応能力の向上を通じて、世界全体が感染の封じ込みに成功するように両国は力を合わせるべきである。

 世界の主要国である日本と中国は、コロナ後の世界経済の復興に向けて協力すると同時に、安定的な世界経済の発展のためにより市場の取引に見合った自由貿易体制を守る必要がある。そのためには、開放的でルールに基づく自由経済秩序と多国間の国際協力を前提に、それに見合った構造改革をそれぞれ進めなくてはならない。東アジア地域包括経済連携(RCEP)の妥結を踏まえ、日中韓のFTAや中国のCPTTPへの加入の検討を支持し、アジア太平洋地域でのルールに基づく経済連携を推し進める。

 日中両国が、アジア太平洋地域の平和と繁栄に責任を持って取り組むことは、国交正常化以来の合意である。東アジアで紛争や事故の懸念が高まる今こそ、両国はその責任を果たす時である。私たちは7年前の「東京-北京フォーラム」で「不戦の誓い」を合意したが、ここで確認された紛争に繋がる現状変更や威嚇などの全ての行動に反対するとともに、この地域の事故や紛争の防止、さらには持続的で安定的な平和環境を実現するために議論を始めるべきである。

 日中両国の首脳外交は、両国関係を発展させる上で重要な役割を果たしている。2021年7月には東京オリンピックが開かれ、その翌年2月には北京で冬季オリンピックが開かれる予定である。世界に歴史的な困難が広がる中で、世界が参加するスポーツの祭典が日本と中国の二つの都で開かれることの意義は大きい。この環境下で行われる両国の首脳外交が両国民の幅広い理解に支えられるためにも、その環境づくりに取り組む。

 日中双方は、これらの合意を踏まえ、世界やアジアの未来を見据えて、現在の困難に答えを見いだす努力を行うと同時に日中の新しい協力に向けて一層の努力を行う決意である。


2020年12月1日     
言論NPO
中国国際出版集団