言論NPOの活動にこれまで参加していただいた全国の有識者約6000人を対象に、2015年
5月8日から1日間の期間でアンケートの回答を依頼し、回答のあった101人の回答内容を分析した。
回答者の属性
※各属性で示されている数値以外は無回答の割合。この頁以降、数値は小数点第2位を四捨五入しているため、合計が100%とならない場合があります。
クリミア併合について、許されないとの回答が最多となるも、理解を示す声も
昨年3月にクリミア自治共和国で行われた住民投票により、ロシアはクリミア自治共和国を併合しました。その後も、ウクライナ東部のドネツク、ルガンスク両州の親ロシア派支配地域を独立国家として承認する可能性を示唆する等しています。こうしたプーチン大統領の一連の行動をどのように考えるかを尋ねたところ、「軍事的脅威を背景にした『力による現状変更』であり、いかなる理由があろうとも許されない」との回答が43.6%で最多となりました。
一方、「『力による』変更は許されないが、クリミアはロシアにとっては歴史的に特別な地域であり、かつ欧米側の指示でウクライナのEU加盟やNATO参加を阻止するためのやむを得ない対応とも理解できる」と、ロシアの行動に一定程度理解を示す回答も34.7%いることが分かりました。
- 「軍事的脅威を背景にした『力による現状変更』であり、いかなる理由があろうとも許されない」と回答した人の具体的記述
- 「『力による変更』は許されないが、...やむを得ない対応」と回答した人の具体的記述
- 「どちらともいえない」と回答した人の具体的記述
- 「わからない」と回答した人の具体的記述
クリミアの将来について、「『未承認国家』のまま存在する」との回答が最多
次に、ロシアに併合されたクリミアの将来についてどのように考えているかを尋ねたところ、「ロシアの併合を世界が認めないまま、『未承認国家』のまま存在する」(42.6%)との回答が最多となり、「国際社会は併合されたクリミアを承認するか、国家承認しないまま関係を保っていく」(27.7%)との回答が続きました。
一方、「ウクライナが力を回復し、強制的にクリミアとの統合を取り戻す」、「クリミアが平和的にウクライナの主権内に戻り、再統合が実現する」との両回答を選択する人はおらず、クリミアの将来については、現状が継続していくとの回答が多数となりました。
ウクライナ紛争は「長期化する」との回答が8割近くに上りました
ウクライナとロシアの間で今年2月中旬、仏独両首脳の調停で停戦合意が成立しましたが、その後も局地的な戦闘が続いています。こうしたウクライナの紛争の見通しについて尋ねたところ、「長期化すると思う」(77.2%)との回答が8割近くとなり、「まもなく収束すると思う」との回答は5.0%にとどまりました。
ウクライナの今後の経済的な見通しは「不透明」との回答が最多に
国際通貨基金(IMF)はウクライナ経済再建のため、総額175億ドル(約2兆1千億円)の追加金融支援を実施することで同国政府と暫定合意しています。こうした状況を踏まえて、ウクライナの今後の経済的な見通しについて尋ねました。最も多数を占めたのは、「国際的な支援を得ても経済再建は難しく、先行きは不透明」(70.3%)で7割を超え、「国際的な支援もあり、経済的には立ち直る」との回答は6.9%にとどまりました。「現時点では判断できない」との回答も15.8%と一定程度いることが分かります。
ウクライナ問題で、日本は積極的な役割を果たすべきとの回答が半数近くに
最後に、ウクライナ問題について日本はどのように行動すべきだと思うかを尋ねたところ、「問題解決に向けたロシア・ウクライナの積極的な仲介や、東京で関係国会議を行う」との回答が26.7%となり最多となり、「ウクライナ自身が自立するため、経済的支援の積極的に対応する」(21.8%)との回答が続き、積極的な役割を果たすべきとの回答が半数近くに上りました。
一方、「『力による現状変更』では平和的な国際秩序は困難であり、各国と対ロ制裁で足並みを揃える」との回答も2割を超えて存在しています。また、「北方領土問題などもあり、ロシアを刺激しないように消極的な対応でいい」との回答も16.8%と一定程度存在しています。