工藤泰志 (言論NPO代表)
くどう・やすし
1958年生まれ。横浜市立大大学院経済学修士修了。東洋経済新報社入社。「金融ビジネス」編集長を経て、99年4月から2001年4月まで「論争東洋経済」編集長を務める。同年11月「言論NPO」を立ち上げ、多彩な言論状況を作り出している。同名の雑誌も創刊。「新しい日本をつくる国民会議 (21世紀臨調)」の常任政策委員を務める。主著に『土地神話の行方』。
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挨拶
皆さん、おはようございます。
主催者を代表として、中国側の友人、多くの日本人パネリストと、出席者の方々にお礼を申し上げます。この北京-東京フォーラムは、二年前、8月という特別なときに立ち上げたものです。
これは民間による新しい舞台として、新しい議論の場を作ることを目的としたもので、表面的な友好を繕うのではなくて、本音で議論をおこなうために開催しました。
つまり、議論のための議論ではなく、答えのある議論であり、これを私たちは公共外交とよんでいるのです。昨年までのフォーラムでも日中の課題やアジアの未来に関して議論することによって、歴史を動かすことが可能であることを確信しました。
これは、運がよかっただけではありません。運を待っていては、運はつかめないのです。これは、ここにいるみなさんの努力の結果であります。今日ここには、200人近い参加者がいます。
特定の団体や組織をもとに行っているのではなく、自覚的な意識を持った個人が支えているのです。新しい民間の交流がアジアの新しい価値を構築すると考えています。
日本では、新しい政治の動きが始まりました。政治的緊迫の中でも、ここまで多くの参加者が中国に来たのは、新しい流れにこのフォーラムが支えられているためだと考えています。
最後に、安倍首相のメッセージを代読して、私のメッセージを終えたいと思います。
昨年、私は、東京で開催された第2回フォーラムに出席し、官房長官として、また一人の政治家として、日中関係についての私の考えを申し上げました。すなわち、日中両国が対話と協力を積み重ね、共通利益を拡大させるとともに、アジアの大国同士、国際社会において共に責任を果たしていくことが重要であり、両国の政治家には、そのチャレンジに立ち向かう覚悟が問われている、そして、そのために「政治」と「経済」の二つの車輪を力強く作動させ、日中関係を更に高度の次元に高めていくような関係を構築しなければならないといった考えです。
昨年10月、総理就任直後の最初の外国訪問として私が中国を訪問したのは、まさにこうした考えを実践するためです。
そして、中国の指導者との間で、日中関係の新たな指針として「戦略的互恵関係」の構築を打ち出しました。日中両国の首脳が、胸襟を開き、率直な意見交換を行うことは、日中関係のみならず、アジア、世界の未来に大きくプラスとなるものです。その後も温家宝総理が我が国を訪れる等、日中両国は対話と交流を重ね、「戦略的互恵関係」の構築に向けた歩みが着実に進んでいることを嬉しく思います。
しかし、現在のこうした日中関係の趨勢は、言うまでもなく、私の昨年の訪中や温家宝総理の来日のみによって達成されたものではありません。両国国民のあらゆる層における交流が進展してこそ、本当の意味での日中関係強化に繋がるものであり、そのような意味で、この「北京-東京フォーラム」に期待される役割は非常に大きいものがあると考えます。
私も昨年のフォーラムに実際に参加して、各界を代表する日中の有識者が日中間の諸問題について、真摯に、そして情熱的に議論に取り組まれる姿に大いに感銘を受けました。
「戦略的互恵関係」とは、日中両国がアジア及び世界に対して厳粛な責任を負うとの認識の下、アジア及び世界に共に貢献する中で、互いの共通の利益を拡大していくという関係です。
これは決して待っていて達成されるものではなく、具体的な協力や交流の積み重ねを通じ、これから我々の手によって作り上げていくものであり、民間主導で日中間に本音で議論ができる新しいチャネルをつくろうという本フォーラムの試みは、日本政府としても大いに歓迎するものであります。
今回のフォーラムでは、経済、環境、安全保障など多岐の分野にわたり議論が行われると承知しております。特に環境問題は、国際社会が一致協力して取り組む必要がある課題です。本年5月、私は気候変動に係る新提案「美しい星50(Cool Earth 50)」を発表しましたが、中国がこの地球規模の課題について重要な役割を果たしていくことを強く期待しています。その観点からも、今回のフォーラムにおける議論の行方にも大いに注目しております。
最後になりますが、このフォーラム実現のために御尽力された日中両国の関係者の皆様に敬意を表しますとともに、本フォーラムの成功を心より祈念いたします。』
ありがとうございました。
文責:山下泰静