基調講演 : 呉建民 (中国外交学院院長)

2007年8月28日

p_070828_11.jpg呉建民(外交学院院長)
ウー・ジエンミン

1959年北京外国語学院フランス語学部卒業、外交部に配置される。外交部の手配で、北京外国語学院翻訳クラス(大学院生)にて更に3年学ぶ。 1985―1989年は中国国連常駐代表団の参事官を担当。1989―1990年はベルギーの中国大使館、駐EC外交団の政務参事官、首席館員を担当。 1991―1994年外交部報道司司長、スポークスマン。1994―1995年駐オランダ王国特命全権大使。1996―1998年は中国国連常駐ジュネーブ事務所とスイスのその他の国際組織の駐在代表、特命全権大使を担当。2003年 7月外交学院院長、全国政治協商会議外事委員会副主任。2003年12月博覧会国際事務局主席。2005年3月より全国政治協商会議副秘書長兼スポークスマン

基調講演

 おはようございます。私は今回初めてこのフォーラムに参加をいたしました。

 中日関係に関して、私には3つの視点がございます。

 まず1つ目は中日関係を部分的にではなく、全体的に理解する必要があると思います。我々には2000年の長い友好交流の歴史があります。周恩来総理は、その2000年のうち50年の対立があるとまとめておられました。私はその発言は、よくまとまっていると思います。確かに、この50年の対立で中国は大きな被害を受けましたが、周恩来総理のまとめの主眼は友好にあります。

 また、アジアを中心に据えて考えるべきです。東アジアの台頭がなければ中国の発展はないと思います。東アジアが前に進む中においては、中日の発展が必要であり、発展をシェアしていくことが重要です。中日関係は東アジア全体に影響し、発展を促していくものです。

 2つ目は、今年は、国交回復35周年です。今の中日関係は前例のないものです。中国と日本との国家間の発展が大変注目されており、1972年には11億だった両国の貿易額も、宮本大使は先ほどの講演でおっしゃっていた通り、2100億米ドルにまで増加しました。35年間の成長の現れであると思います。中日両国はいささか問題はあったものの、大きく変化を遂げております。

 3つ目は、現在の中日関係にグローバルな位置づけをすることです。中日関係は21世紀に影響を及ぼす大きな流れをもたらしており、中国やインドに影響を与えるだけでなく、合計人口が23億になるASEANにまで影響を及ぼします。これは人類の歴史の中でかつてないことであり、生活の質も向上させ、素晴らしいと同時に偉大なことであります。

 中国は78年の改革開放以来の成長により、東アジアの中で台頭して参りました。ドイツの総理が外交学院におこし下さいました際、ヨーロッパ至上主義はもう終わりだとお話になられました。

 東アジアは大きく繁栄してきました。そのなかで、私は始まったばかりの中日関係の発展が必要になると思います。胡錦濤国家主席は、両国が戦いをすれば、両国に被害を与えるだけだと話されました。また先ほど、岡田先生もそのようにお話になりました。

 中日関係は東アジアの発展、世界の発展に関わるものであり、いかに中日関係が大事なものかは、皆さんお分かりだと思います。

 我々は、趙啓正氏のお話にもあった通り、共通利益を大事にするべきだと思います。安倍総理も祝辞のなかでそう述べておられました。

 中日関係発展のためには、基礎、ベースがしっかりしていなければなりません。有利な立場に立ち、中日の間でどのような利益があるかを考えたいと思います。


 また、環境、エネルギ−など、環境の面では中国は大きな代償を払っていると言えます。

 空気汚染に関しては、トヨタの社長が廃棄ガスの影響でお倒れになったと伺っております。環境汚染には、国境がありません。中国における、空気汚染の問題が悪化をすれば、いずれ日本にも影響を及ぼすことになります。中国はそのことを意識に根付かせなければといけないと考えます。

 エネルギー問題については、両国ともエネルギーを必要としているので、喧嘩になるかもしれません。

 例えば、中東からアジアに輸出した石油を1ドル増やせば、大きな問題になりますが、ヨーロッパではそういうことはありません。なぜ差別するのでしょうか。

 しかし、一方で、我々はエネルギーの利用効率は悪いようです。日本の利用効率は中国の10倍です。多くの問題において言えることですが、技術がネックになっていると言えると思います。日本から技術移転することはできないでしょうか。中国がどのように成長していくのか、一方で、我々はいかにして地球を救うか、今後重点をおくべきであると思います。

 太陽光利用、技術移転など、技術移転に関してはインド、ブラジル、メキシコにも移転するべきだと思います。そうすれば、温室効果ガスについても好影響を与えることができます。そうすれば、共通の利益が出ます。

 この2年間、政治では問題がありましたが、経済面では870億も成長を遂げました。冷えている時期があっても、小林陽太郎先生のお話でもあったように、我々の共通の利益を前に押し詰め、それが幅広く行き渡るよう、我々の利益の最大化を目指す必要があると思います。


 最後に、このフォーラムについて述べさせて頂きます。

 私は昔外交官を務めておりましたが、工藤先生のおっしゃる通り、多少喧嘩になることもまた、構わないと思います。

 意見交換をすることで、共同利益の促進ができますし、このフォーラムには多くのメディア、そしてNPOの方が携わっており、更に我々の考えを促進させ、その後一般の国民に伝えることができる大変良い場であると思います。

 歴史の長い流れの中で、そして大きなグローバル化の中で、中日関係を軽視するべきではないということを再度申し上げたいと思います。


文責:王 里佳