趙啓正(全国政治協商会議外事委員会副主任)
ジァオ・チィジォン
1940年1月北京生まれ。1963年中国科学技術大学核物理専攻卒業。1991年より上海市委員会常務委員、副市長を担当。1993年より上海浦東新区管理委員会初代主任と党委員会書記を兼任。1998年中共中央対外宣伝弁公室主任、国務院新聞弁公室主任を務め、2002年中国共産党第十六回大会中央委員会委員に当選。
基調講演
おはようございます。われわれは3回目のフォーラムを迎えています。第1回開催時のときの関係は0度より低い状態でした。2回目は0からプラス2度ぐらいの関係でした。
今はプラスの状態です。氷が融けている状態にあります。
世論調査が行われましたが、中国人の日本に対する印象はよくなっています。この統計は信頼できます。示された好印象の数字は、統計学上の誤差を上回っています。
また、この良い状態は、後戻りはしないでしょう。理由は3つあります。
1つ目は、安倍総理が昨年10月に訪中したことがあります。これは政治的な決定であり、民意の基盤がありました。10月の世論調査では、67%の日本国民が中日関係は改善すべきだと答えています。朝日新聞の行った世論調査では63%の人が積極的に改善すべきと答えています。さらに訪中後には、日本国民の87%の人が訪中を支持していました。温家宝の訪日は日本人に高い支持を得ていました。
2つ目は、中日両国は経済相互依存関係にあることがあります。戦略的な利益関係ですから、これは政治的関係が悪化した際にはブレーキとなります。昨年の中日間の貿易高は2000米ドルになりました。さらに今年もこれを超えるでしょう。そして、いかなる国も経済的な損害を期待しないものです。
3つ目は、中日関係はグローバルな課題であるということです。外部環境の改善もプラスになりました。他国は中日関係を心配しています。私はニュージーランド、オーストラリアのフォーラムで中日友好35周年の懇談会に参加しました。すると、中日関係について厳しく質問されました。いかなる国も日本と中国の機嫌を損ねることはしたくないのです。今両国関係は登り道にいます。慎重な運転、ブレーキをかけないこと、ギアチェンジをしないことが大切です。安定運転をするべきなのです。彼らは中日間の関係がストップすることを恐れています。アメリカを含め他国は中日関係の悪化を望んでいません。
しかし、懸念すべきことも3つあります。
1つ目は、両国は共通の戦略的互恵関係を維持することに合意する必要があります。小林さんの報告は大変すばらしいものでした。小林さんのおっしゃる通り、率直な意見の交換をすべきだと思います。しかし、日本の中には中国脅威論を唱えている人々が一部に居ることを中国側は懸念しています。
2つ目は、インド、イギリスのメディアです。安倍首相はインドの国会で演説した際に、大アジアの価値観同盟について提唱なさいました。大アジアは日本、アメリカ、インド、オーストラリアの4カ国を含むものですが、中国が入っていないのは問題だと思います。
3つ目は、尖閣諸島や、東シナ海ガス田の問題があります。田中角栄元総理と周恩来元総理が会談した際には、田中角栄元総理は尖閣諸島について協議しようとしましたが、周恩来元総理は次の世代に任せようと言いました。また、二階堂先生はOKと言ったので、上海は二階堂先生の発言を引用しました。政治指導者の長い目から見た見解を尊重すべきだと思います。
世論調査を見ると、よくなってきていますが、世論とは波のような、変化のあるものです。下がっていても懸念すべきではありませんし、また氷を融かすにも時間はかかります。世論調査を受けた人々は相手国に被害を与えないようなやり方について、さまざまな意見を述べました。フォーラムは両国の国民が考えるひとつの原動力を与えることになるでしょう。
このフォーラムは成功を収めるにちがいありません。私は昨年訪中時の安倍総理の「政治、経済二つの車輪を動かす」とのメッセージに大きく励まされました。中日関係の改善には蓄積が必要です。水滴石をうがつとの考えに賛同します。われわれの緊急課題は、両国民の相互理解、誤解をなくすことです。公共外交、民間外交を行うことです。民間外交は今後ますます広がっていきます。
では、中国については、日本にどういう印象を持ってもらえばよいのでしょうか。中国は発展途上国であるという認識を持たせるべきだと思います。北京、上海だけが中国でないことを日本国民はご存知でしょうか。
中国は自国を発展させるべきです。また、アジア、世界の発展、平和のために貢献すべきです。
アメリカはアメリカの利益のために中国と接触し、抑制しなければならないと考えています。中国は日本の利益のために中日関係を良くしたいと考えています。冷戦的な思考は古い考えだと思います。しかし、中国に対する反対意見がたくさん出てきています。これに反対はしません。中国を抑制しようとすることは、まずい結果を引き起こすでしょう。中国、地域の平和のために不利な結果をもたらすでしょう。例えば、サッチャー首相の著作に中国抑制についての記述がありますが、これを信頼してはいけません。
世論調査における両国民の相手に対する印象はよくなっています。千里の旅も一歩からです。1年で5ポイントでも上昇するのはよいことだと思います。少しずつ、千里の道を歩いていきたいと思います。
文責:小川恭子