言論NPOとは

平成28年度 言論NPO活動報告

 言論NPOは、平成27年度に「中立、独立、非営利のネットワーク型シンクタンク」を5年後(東京五輪開催の平成32年(2020年))に完成することを目標として掲げました。

 28年度の私たちの活動は、言論NPOのミッションとこうした事業計画のもとに行われました。その柱は、これまで行ってきた幅広い言論活動を北東アジアの平和のための周辺国間の「言論外交」と、「世界的な課題解決」、そして「民主主義の強化」や、「日本の将来に向けた政策形成」のための言論という「4つの言論」に集約して動かすこと、同時に、目標達成に向けて、シンクタンクの組織基盤づくりを念頭に会員組織の運営に取り組むことでした。

 言論NPOが設立15周年を迎えるにあたり、海外からの識者を招いて「リベラルデモクラシーの行方:揺れる世界秩序と台頭するポピュリズム」と題した記念フォーラムを開催し、民主主義を改めて問いかける議論をスタートしました。

 その後、アメリカでのトランプ大統領の誕生、欧州各国でのポピュリスト政党の台頭、トルコやフィリピンなどでも権威主義的なリーダーによる民主主義を逆行させるかのような行動が見られるなど、戦後の世界を支えてきた「自由」と「民主主義」という規範が大きく揺れ動く中、29年3月、言論NPOは、世界10カ国のシンクタンクの代表が集まり、世界の課題について議論する常設の舞台である「東京会議」を立ち上げました。3月4日の公開フォーラムでは、「ポピュリズムと民主主義の未来」「グローバリゼーションと国際システムの今後」をテーマに、400名を超える聴衆を前に議論しました。同時に、3日間にわたる議論から導き出された合意点や主張を、日本政府並びにG7議長国に提案するという画期的な仕組みを日本に初めて実現するなど、非常に大きな事業を成功させました。

 また、日本、インドネシア、インドの3カ国で「アジア言論人会議」を立ち上げ、3カ国で実施した民主主義に関する世論調査結果をベースにしながら、アメリカが主導してきたリベラルデモクラシーが相対的に衰退する中、アジアの三大民主主義国はどのように連携しながら民主主義の発展と平和を実現するのか議論を行いました。

 さらに、国内では、28年7月の参議院選挙において主要8党のマニフェスト評価を行うと同時に、自民党、民進党、公明党、共産党の主要4党の政策責任者を招いて、日本が直面している課題に対して、各党はどう向かっているのか、言論NPOの政策評価委員にも加わってもらい議論を実施しました。さらに、28年12月には定期的に実施している安倍政権4年の実績評価を行い、毎日新聞と紙面連携する形で公表しました。

 28年度は「世界的な課題解決」、「民主主義の強化」や、「日本の将来に向けた政策形成」については、これまでにない非常に大きな流れをつくり上げることができました。

 そして、「言論外交」においても、「第12回 東京-北京フォーラム」では、2日間で延べ2000人を超える人が参加し、日中両国間には様々な意見の違いがあることを認めた上で、平和と協力発展のために対話をさらに発展させることを「東京コンセンサス」として主催者間で合意しました。また、「第4回日韓未来対話」と「第2回日米中韓4カ国対話」も継続して開催されました。こうした民間外交の動きは、いずれも北東アジアに平和を実現するための取り組みであり、日本の政府間外交が北東アジア地域での平和と発展においてリーダーシップを発揮するための環境づくりになるものです。

 以上に述べたように、28年度は「4つの言論」における活動が、画期的に飛躍した1年であり、「中立、独立、非営利のネットワーク型シンクタンク」の中核となる事業が確立した1年と言えます。

 もう一つの柱である、組織基盤の強化に関しては、会員向けフォーラムや、会員向けの政策勉強会などを定期的に行うなど、会員の方々が集まれる機会を昨年度と比べ大きく拡大しました。7月の参議院選の際にはマニフェスト評価の一環で政党幹部を事務所にお呼びし、会員と意見交換も行いました。こうした会員向けの会合は年間で17回におよび、計247人が参加しました。また、日本青年会議所が29年に国際委員会の名前を「民間外交グループ」に改名し、世界各国で未来対話事業を実施するに伴い、言論NPOと様々な連携を実施しています。その過程で青年会議所から十数名がメンバーとして入会していただきました。

 また設立15周年フォーラム・パーティーでは、過去15年で初めて参加費に加えて寄付金を募り192万円が集まるなど、寄付への取り組みも開始しました。
 しかし、活動内容が飛躍的に拡大する中で、組織基盤はそれに見合った充実が遅れており、組織体制や基盤の整備が課題として残されています。

 また今年度の事業計画で掲げた言論NPOの活動に参加する多くの専門家をコンテンツネットワークとして組織化することも遅れており、これらはいずれも次年度の課題として残されました。


主な活動履歴

2017年3月 「東京会議」創設G7議長国(イタリア)への緊急メッセージを採択
  「東京会議」プレ企画フォーラム開催
2月 「アジア民主主義研究ネットワーク(ADRN)」台北地域会合参加
  「ワールド・アジェンダ・カウンシル(WAC)」第6回会議
1月 アメリカ・ワシントンDCを訪問し、米国シンクタンク等と協議
  ドキュメンタリー番組「言論のちから 民主主義のかたち ~ヒトラーを生まないために~」放送される
2016年12月 安倍政権4年の実績評価公表
  第4回「エクセレントNPO」大賞
  「ワールド・アジェンダ・カウンシル(WAC)」第5回会議
11月 言論NPO設立15周年記念フォーラム/パーティー
  東京で、第2回日米中韓4カ国対話「国民の世論から見る北東アジアの平和環境の行方」を開催
  日中韓共同世論調査結果公表
10月 「ワールド・アジェンダ・カウンシル(WAC)」第4回会議
9月 東京で、「第12回 東京-北京フォーラム」開催、日中共同世論調査結果公表
  ソウルで「第4回日韓未来対話」開催
8月 日尼印3カ国の民主主義に関する世論調査結果公表
  日本、インドネシア、インド3カ国によるアジア言論人会議発足、公開フォーラム「世界の民主主義はどのような試練に直面しているのか ~グローバリズムと民主主義の試練~」開催
7月 日韓共同世論調査結果公表
  ヘンリールース財団の訪日団との意見交換会開催
  「ワールド・アジェンダ・カウンシル(WAC)」第3回会議開催
6月

自民、民進、公明、共産の主要4党は日本の課題にどう向かい合っているのか~主要4党の政策責任者と言論NPOの評価委員との議論を会員参加で行ないました~
  「2016年参議院選挙 マニフェスト評価」公表
  言論NPOフォーラム「不安定化する国際秩序と民間外交の役割」開催
5月 「ワールド・アジェンダ・カウンシル(WAC)」第2回会議開催
  世界的な課題10分野に関する言論NPOの「進展度評価結果」を公表
  世界25ヵ国のシンクタンクのトップは世界の課題をどう評価したか~CoCレポートカード公表~
  CoC年次総会参加


「4つの言論」が大きく飛躍した平成28年度

 平成28年度は、前年度に築いた「4つの言論」(「日本の将来に向けた政策形成」「民主主義の強化」「言論外交」「世界的な課題解決」)で本格的な議論を開始し、それぞれへ国内外の一線の専門家の参加と世界を代表するシンクタンクと連携し、言論NPOが目指す言論の舞台の基盤を作り上げました。


節目に、民主主義を改めて問いかける議論をスタート

13.jpg 言論NPOが設立15周年を迎えた11月21日、15周年記念フォーラム/パーティーを開催しました。会場には300人を超える人が参加し、満員状態でした。

 アメリカ大統領選挙やイギリスのEU離脱の国民投票など、今、世界中で政治が国民の不安に迎合するポピュリズムの傾向が強まる中、私たちはこうした世界の民主主義の状況をどう見ていけばいいのか、民主主義の危機が指摘されている中、民主主義の未来をどのように考えていけばいいのか。言論NPOは、民主主義の将来と言論の責任を大テーマに、代表、工藤とNEWS ZEROキャスターの村尾信尚氏との対談で始まったオープニングフォーラムに続き、国外の有力者を招いて行った「リベラルデモクラシーの行方:揺れる世界秩序と台頭するポピュリズム」や、日本の政治家と議論した「日本は民主主義と自国の将来像をどう描くか」など、様々な議論を行いました。このパーティーの中で代表の工藤は、世界の自由な秩序と民主主義が試練に直面する中で、東京でこうした議論を開始する意味は大きく、言論NPOのミッションが問われている、とした上で、こうした私たちの取り組みを次の若い世代に繋げていきたい、と次の5年にかける決意を語りました。

・オープニングフォーラム「民主主義の将来と言論NPOの役割」
     工藤泰志×村尾信尚(「NEWS ZERO」キャスター) 対談
・セッション①「リベラルデモクラシーの行方:揺れる世界秩序と台頭するポピュリズム」
     ハッサン・ウィラユダ(元インドネシア外務大臣)
     フォルカー・シュタンツェル(元駐日本ドイツ大使)
     キース・クラウス(ジュネーブ高等国際・開発問題研究所教授)
     デビッド・ホーリー(元ロサンジェルスタイムス特派員)
     ジェラルド・カーティス(コロンビア大学教授)
・セッション②「日本は民主主義と自国の将来像をどう描くか」
     逢沢一郎(衆議院議員、元外務副大臣)
     中谷元(衆議院議員、前防衛大臣)
     松本剛明(衆議院議員、元外務大臣)


世界課題を議論する舞台「東京会議」を創設(3月3日~4日)

21.jpg 29年3月、東京都内の国連大学で立ち上げた「東京会議」には、海外から世界を代表し、各国の政策形成に実質的な影響力を持つ10カ国の世界を代表するシンクタンクのトップが参加し、日本側パネリストとともに質の高い議論を繰り広げました。また会場は500人を超える人が集まり、二階席まで満員となりました。

 そうした国内外のオピニオンリーダーに加え、杉山外務事務次官や浅川財務官らG7に関係する政府関係者も議論に参加し、最終的に講演を行った岸田外務大臣及び、29年G7議長国イタリアのジョルジ駐日イタリア大使に対して、「イタリアでのG7首脳会議に向けた緊急メッセージ」を手渡しました。

 世界各国がいま喫緊の課題として取り組んでいる自由民主主義やグローバリゼーションという世界が直面する問題に対し、東京発で議論を行い、それをG7の議長国や世界に発信するということは、これまでになかったことであり、参加した各国シンクタンクからは高い評価とカウンターパートとしての信頼、今後の継続的な取り組みに対する期待が寄せられました。こうした関係を言論NPOが、自由と民主主義を共通の価値とする世界を代表する世界10か国のシンクタンクの団体と構築できたことは、日本の外交にとっても重要なアセット(資産)になるものと考えます。

 また、3月4日の「東京会議」公開セッションには、国内の有識者・メディア・一般聴衆ら400名を超える人が参加すると同時に、その内容はインターネットで動画中継されました。また、内容は英語でも世界に発信されました。

 この東京会議創設の目的は、世界課題に関する日本の影響力の向上と日本社会における議論の場の形成ですが、世界が直面する課題について世界への提案と日本社会に最先端の議論の場と考える機会を作り出すことができました。
 
 メディア報道としては、全国紙・通信社で紙面掲載されたものは10件、ウェブ版に掲載されたものが14件、テレビでニュースとして取り上げられたのは1件です。

◆世界10カ国シンクタンクからの参加者・パネリスト:

【アメリカ】ジェームズ・リンゼイ(外交問題評議会シニアバイスプレジデント)
【イギリス】ジョン・二ルソン・ライト(王立国際問題研究所シニア・リサーチ・フェロー)
【イタリア】エットーレ・グレコ(イタリア国際問題研究所所長)
【インド】サンジョイ・ジョッシ(オブザーバー研究財団所長)
【インドネシア】フィリップ・ベルモンテ(戦略国際問題研究所所長)
【カナダ】ロヒントン・メドーラ(国際ガバナンス・イノベーションセンター総裁)
【フランス】トマ・ゴマール(フランス国際関係研究所所長)
【ブラジル】カルロス・イヴァン・シモンセン・レアル(ジェトゥリオ・ヴァルガス財団 総裁)
【ドイツ】バーバラ・リパート(ドイツ国際政治安全保障研究所調査ディレクター)
【日本】工藤泰志(言論NPO代表)

◆「東京会議」公開セッションパネリスト:

 浅川雅嗣(財務省 財務官)
 杉山晋輔(外務省 事務次官)
 田中明彦 (WAC委員、東京大学東洋文化研究所教授、前JICA理事長)
 長谷川閑史(WAC委員、武田薬品工業株式会社取締役会長、前経済同友会代表幹事)
 藤崎一郎(WAC委員上智大学国際関係研究所代表、前駐米大使)
 また、「東京会議」の非公式会議には代表の工藤のほか、WAC委員である古城佳子(東京大学総合文化研究科教授)、内野逸勢(大和総研経済環境調査部長)、滝澤三郎(国連UNHCR協会理事長、元UNHCR駐日代表)、藤崎一郎(上智大学国際関係研究所代表、前駐米大使)が出席しました。


日本・インド・インドネシア3カ国で「アジア言論人会議」を立ち上げる

 言論NPOは、7月から9月にかけて、インドネシアの戦略国際問題研究所(CSIS)、インド・オブザーバー研究財団(ORF)の二団体との協力で3カ国、全3,000人へ民主主義に関する世論調査を実施しました。その調査結果の中で、自国の将来を尋ねた設問では、日本人の4割が自国の将来に悲観的なのに対し、インドネシア人の6割超、インド人の7割超が楽観的であるという結果が出ました。また、その解決を自国の政党に期待できるか、の設問では日本では15.5%しか期待していないことが注目されました。また、自国の民主主義が機能しているかという設問では、「機能している」と考えている日本人は46.7%、インドネシア人は47.1%である一方、「機能している」と考えているインド人は65.0%となり、3カ国の中で突出して高くなりました。その他、「民主主義は望ましい政治形態なのか」「政治指導者のリーダーシップの在り方」「世界の民主主義は後退しているのか」など、3カ国の国民に自国や世界の民主主義の現状や課題を聞き、その結果を公表しました。

 この世論調査結果を受けて、8月19日、3カ国による公開フォーラムを開催し、日本側からは、藤崎一郎氏(前駐米大使)、林芳正氏(参議院議員、前農林水産大臣)ら8氏が登壇、基調報告を杉山晋輔外務次官が行いました。インドネシアからはハッサン・ウィラユダ氏(元外相)、ジムリー・アシディキ氏(インドネシア初代憲法裁判所長官) らが、インドからはミヒール・シャルマ氏(オブザーバー研究財団シニアフェロー)などが参加しました。

アジア言論人会議の創設(8月19日) テーマ:「世界のデモクラシーは後退したのか? ~アジアの民主主義国はこの試練にどう立ち向かうのか~」

・セッション1:
   「世界の民主主義はどのような試練に直面しているのか~グローバリズムと民主主義の試練~」
・セッション2:
   「アジアの民主主義は後退したのか~世論調査にみるアジアの民主主義の課題と挑戦~」

パネリスト
【インドネシア】
 ハッサン・ウィラユダ(インドネシア元外務大臣)
 フィリップ・ベルモンテ(インドネシア国際戦略研究所(CSIS)所長)
 ジムリー・アシディキ(インドネシア初代憲法裁判所長官)
 アジュマルディ・アズラ(国立イスラーム大学 ジャカルタ校大学院長兼歴史学教授)
 イェニー・ワヒッド(ワヒド研究所所長)
 ミヒール・シャルマ(オブザーバー研究財団シニアフェロー)
【インド】
 ミヒール・シャルマ(オブザーバー研究財団シニアフェロー)
【日本】
 古城佳子(東京大学大学院総合文化研究科教授)
 神保謙(慶應義塾大学総合政策学部准教授)
 杉山晋輔(外務事務次官)
 林芳正(参議院議員、前農林水産大臣)
 藤崎一郎(上智大学国際関係研究所代表、前駐米大使)
 藤原帰一(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
 吉田徹(北海道大学法学研究科教授)
 工藤泰志(言論NPO代表)

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日本の将来課題と強い民主主義に対する取り組み

 言論NPOは、2001年の創設以来、毎年、有権者が日本の将来と民主主義を真剣に考えるための判断材料を提供しています。

 今年は、平成28年7月の参議院選挙が行われましたが、選挙前に日本の将来課題をめぐる政党や政治家の考えを明らかにするため、各政党の公約を対象に、言論NPOのマニフェスト評価基準に基づき、「人口減少・少子高齢化」「財政」「社会保障」「地方再生・震災復興」「経済」「外交・安全保障」の6つの分野で主要8党のマニフェスト評価を公表しました。 

 評価にあたっては、有識者294人へのアンケート調査や各分野の専門家20氏による公開議論により、政党や政治家が国民に明らかにすべき争点を抽出したほか、自民・公明・民進・共産の主要4政党については実際に各党の政策責任者を事務所などに招いて、評価委員を務める専門家等との議論を行いました。これらの議論はすべて会員には公開しました。

 さらに12月には、安倍政権発足4年に伴い、政権が国民に対して約束した中心的な政策60項目について、4年間でどのような成果を出したのかを検証し「安倍政権4年の通信簿」としてホームページで公表しました。その結果は、5点満点で2.7点となり、昨年の12月26日時点で行った安倍政権3年の評価結果(2.7点)と同水準でした。

27.jpg この実績評価には、各分野の一線で活躍する40氏を超える専門家の方々に評価作業に協力していただきました。このうち23氏が、実際の評価作業の議論に参加し、評価コメントを出していただきました。それらの内容は全てホームページで公開しています。


「言論外交」の挑戦

 言論NPOが取り組む「言論外交」は、北東アジアに平和な将来秩序を構築するための、国民に開かれた対話のアプローチです。平成28年度は、前年度に継続し、日中の「東京―北京フォーラム」、日韓の「日韓未来対話」を実施するとともに、日中、日韓のそれぞれの共同の世論調査を公表しました。

 また、北東アジアの平和に焦点を当てた日米中韓の4カ国共同世論調査を実施し、その内容を巡って調査を行ったシンクタンク代表間で対話を行いました。

 このほか、6月には、慶応大学SFC研究所との共催により南カルフォルニア大学と言論NPOとの間で、「不安定化する国際秩序と民間外交の役割」に関するフォーラムを開催し、「パブリック・ディプロマシー」の展開や民主主義の質の問題について、国内外の識者とともに対話の機会をつくりました。また7月には、米国のヘンリー・ルース財団(米タイム誌の共同創立者ヘンリー・ルースによって設立、東アジアにおける教育や相互理解の促進、青年交流に注力する財団)の訪日にあたり、約30人の財団スタッフとの意見交換を行うほか、岸田外務大臣への表敬訪問をサポートし、民間外交の重要性を共有しました。

(第4回日韓未来対話、9月1・2日)

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 9月1日、2日の二日間にわたり、韓国・ソウル市内で開催され約200名の一般参加者やメディア関係者が集まり、この対話を傍聴しました。

 今回の日韓未来対話では、北東アジア情勢が流動化する中、地域の安定化や平和に向けて日韓両国がどのような役割を果たすことができるのか、を日韓二国間の相互理解や協力発展に加えて、中心的テーマに据えて議論を行いました。また、昨年12月の従軍慰安婦問題の合意以降、政府間外交が「未来志向」をキーワードに関係改善に動きだしている中でも、国民レベルがまだ関係改善を確信できていないこと、日韓両国民がお互いの重要性をどのように考えているのか、など民間の立場から未来に向けた両国関係の発展に向けた真剣な議論がなされました。議論の中では、政府間だけでなく、市民が自覚と責任を持って関係改善に向けた重層的な協力関係を築いていくことの重要性や、両国の未来に向けた議論を今後も継続して行っていくこと、の意味を日韓双方で確認しました。

(第12回 東京−北京フォーラム、9月27・28日)

 「第12回 東京-北京フォーラム」は9月27日・28日の2日間にわたって全体会議や政治・外交、経済、安全保障、メディア、交流の5つの分科会が行われました。また、全体会議と安全保障の分科会はその全てをインターネットで中継しました。

2.jpg 今回のフォーラムには、中国を代表する70氏の論者、日本からも国会開催日にも関わらず7名の国会議員をはじめ50氏がパネリストとして参加し、日中間の課題に真剣に向かい合い、議論が行われました。会場には延べ2000人の聴衆が集まり、政治対話では250人を超す両国の若者が会場を埋め尽くしました。そして2年ぶりに共同声明である「東京コンセンサス」も発表することができました。

 今回の対話の直前には中国で行われたG20で安部首相と習近平主席が会談を行い、協力関係の発展を約束しています。それを踏まえ私たちの対話は、二国間の改善に加え、流動化する世界の秩序やアジアの変化に両国はどのように向かい合うのか、不安定化するグローバル経済の中での両国の経済構造改革や経済協力、東シナ海や南シナ海での平和、日中両国の人的交流、メディア報道と世論の問題などについて真剣な議論が行われました。

(第2回日米中韓4カ国対話 11月2日)

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 6月から9月にかけて、日本・言論NPO、中国・零点研究コンサルテーショングループ、韓国・東アジア研究院と共同の世論調査を実施し、3カ国で計6117人から回答を得ました。この世論調査結果を受ける形で、本調査に参加した3シンクタンクのトップらや、アメリカのピューリサーチセンターからブルース・ストークス氏、そして日本を代表する論者らが、11月2日、東京に集まり、今後アジアの平和秩序を形成していくために何が必要なのか、アメリカ大統領選の行方や、韓国における朴大統領を取り巻く問題など、現在の情勢変化を交えつつ、北東アジアの平和環境の将来について議論を行いました。


議論形成の日本社会と世界への発信

 これらの全ての議論は、英語版ウェブサイトに設けた「World Agenda Studio」や英語でのニュースレター配信を通じて、海外有力シンクタンクやメディアなど、世界の知識層にも広く発信しました。また、この一年間で、世界的課題についての各国の有力なシンクタンクとの議論や、米国ジャーナリストとの対話等を通じて、海外有識者とのネットワークが大きく広がりました。こうしたチャネルを活用して日本の声やオピニオンを世界に伝える役割を担いました。

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 国内外のメディア報道については、特に、「第12回東京-北京フォーラム」や日中共同世論調査、第4回日米中韓共同世論調査など言論外交の取り組みが国内外で大きく取り上げられ、私たちが調べただけでも453件の報道を確認しました(国内報道284件、海外報道169件)。

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 ただ、言論NPO年間のウェブサイトの訪問者数(UU)は17万034人となり、昨年度より微減となっています。昨年と比べて活動が圧倒的に飛躍的に広がりながらも、発信がまだ十分でないという、課題が明らかになりました。一方で、ヤフーに投稿した日韓共同世論調査の論考は667,878PVとなっており、ほかのメディアと連携し、顧客層を広げると同時に、外部から顧客を有印するかも、今後の課題となっています。

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有識者ネットワーク形成への取り組み

 言論NPOが、日本国内で強い影響力を持つ言論活動を発展させるためには、私たちのミッションに賛同するより多くの専門家や知識層の参加が不可欠となります。
28年度は、昨年度に引き続きこれを三つの方向から意識的に取り組みました。

 一つは常設の言論スタジオを開設し、その時々のテーマに見合った公開型のフォーラムを実施したことです。28年度は日本の将来課題や世界の課題を軸に18回の言論スタジオを行い、各界の論者、55氏が出席しました。

 またこうしたフォーラムでは可能な限り、日本の有識者のアンケート結果を公表しており、15回のアンケートに対し3927人からご回答いただきました。

 また、言論NPOのそれぞれの事業に多くの知識層が参加しています。「東京―北京フォーラム」などの運営は実行委員会(東京-北京フォーラムの実行委員長は明石康元国連次長)などが運営していますが、こうした実行委員会は、このほか日韓未来対話、東京会議の運営母体のWAC(ワールド・アジェンダ・カウンシル)があり、合わせて約70氏を超える日本を代表する知識層が参加しています。

 また、昨年末に公表した安倍政権4年目の通信簿では評価作業に40氏を超える各分野の専門家が参加していただき、うち23氏には氏名の公表を許可していただき、メディアなどでも公表されました。
28年度は、こうした有力な知識層をより組織化して、企画段階でも多くの意見を集めることを目指しましたが、それはまだ十分に進んでいません。この言論の活動を支えるネットワークの組織化のさらなる推進が、引き続き次年度の課題になります。

 また日本青年会議所が29年から国際委員会の名前を「民間外交グループ」に改名し、世界各国で未来対話事業を実施するに伴い、言論NPOと様々な連携を実施しました。今後、若い経営者で言論NPOのミッションと共有できる人たちとのさらなる連携も進めていきたいと考えています。


2.会員運営を中心とした組織基盤拡大の取り組み

 言論NPOの組織基盤では、ミッションに賛同し、活動に参加し、定期的な寄付をいただく、会員との協力関係の構築が不可欠です。私たちは、一般の幅広い寄付と会員の毎年の寄付金で本体の運営を賄う方向を目指しており、より多くの人の参加のためには、言論NPOの活動に多くの方が参加していただける運営を強化しなくてはなりません。

 28年度はそのために、会員を対象としたフォーラムを計画的に実施しました。


新たに「政策勉強会」を発足

 言論NPOの活動に、より多くの人々に参加してもらうためには、会員として参加する多くの人が議論に参加し、交流し発言できる機会を作っていく必要があります。

 このため、会員向けフォーラム等の役割の整理と明確化を行い、メンバー向けの「モーニング・フォーラム」に加え、政策課題に精通した専門家を招き議論をする「政策勉強会」を開設すると同時に、言論スタジオの場を公開化し、より多くの人に傍聴の機会を増やしました。

 28年度はモーニング・フォーラムは、参議院選時の政策評価の特別企画を入れて9回実施し、合わせて100氏の方に参加していただきました。また、28年度初めて開催した政策勉強会は6回実施し、講演と交流を合わせた2回の交流会と合わせるとメンバーや会員の147氏に参加していただきました。

 また、言論スタジオは18回行い、それを全て公開しました。この公開フォーラムには会員を含めて81人が参加しました。

 こうした会員を対象とした活動の公開化や交流は計画的に進めましたが、会員やメンバーの増加は目立って進んでおらず、次年度に向けた課題となっています。

 次年度はこうした公開型のイベントや情報発信を充実させ、さらに多くの参加を得るためのキャンペーン等に取り組む中で、より計画的に参加者の拡大に取り組んでいかなくてはなりません。

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多様な資金基盤の確立と組織基盤の課題

 活動資金の調達については、寄付に加え、企業寄付、財団等からの助成という3つの資金基盤の強化に取り組みました。

 個別事業への企業寄付・財団助成等では、アドバイザリーボード・メンバーや支援者からのご紹介などのご協力を得ながら戦略的にアプローチを行い、「東京-北京フォーラム」や「日韓未来対話」などの事業に対する寄付や、国際交流基金などの財団に対する助成に注力しました。また、米国や欧州の財団についても計画的に関係構築を進めており、言論NPOの活動に対する理解や、支持の声が得られつつあります。

 ただし、まだ一般寄付などで本体事業を賄うという点では計画的な努力が必要となっているほか、世界的規模で大きくなっている活動内容に見合う形で組織基盤をより強固なものにする必要もあり、次年度の計画にこれらの課題の引き継がれることになっています。