言論NPOとは

平成29年度 言論NPO事業計画

1.平成29年度の事業目的と方針

(運営の基本目標と目指す組織像)

 言論NPOは平成29年度、「責任ある自由」「民主主義」を守るため、創設以来15年間で築き上げてきた、日本国内外の課題解決に挑む独自のネットワーク型のシンクタンクの形をさらに発展させ、カウンシル(協議会)方式の組織体制に移行するための準備に取り組むこととしました。

 私たちが、ここで目指すのは、米国の外交問題評議会(CFR)などと同様に、ミッションを共有する国内の多くの有識者がその運営や活動にもかかわる、日本版の「言論カウンシル(仮称)」を3年後の2020年後につくるということです。

 こうした作業に本腰を入れて取り組むのは、世界が現在、直面する自由で平和な国際秩序や民主主義の試練に直面しているという深刻な問題があります。私たちが国内外の民主主義、責任ある自由やルール、多国間協力を規範とした世界の秩序の強化に取り組むことは、私たちが掲げたミッションそのものなのです。

 こうした歴史的な課題に取り組むためにも、言論NPOをより多くの人が課題解決に向かって行動し、議論し合う、そうしたプラット・フォームとしてより強いものとする必要があるのです。むしろ、私たちはこれを機会に、この言論NPOという日本だけではなく世界でも稀有な動きを日本の民主主義のインフラとして次世代にもつなぐ、仕組みに発展させたいのです。


なぜ、言論NPOの仕組みをより強化しなければならないのか

 私たちが目指す、言論カウンシル(仮称)の目的は、以下の3点に集約されます。いずれも私たちが初期に掲げ、これまで発展させてきた目的をより体系化したものです。


  • リベラルデモクラシーの強化や、国内外の課題解決に取り組む知的ネットワーク組織
  • 政府ができないことを一歩、半歩進めつつ、政府間の取り組みの基礎工事を行う組織
  • 有権者に判断材料を提供するほか、緊張感あるオピニオン形成に取り組み、民主主義を鍛え直す組織

 これは私たちがこれまで進めてきた、「世界の課題解決」と、「アジアでの平和構築」(言論外交)、「民主主義」を活動の柱にするものです。私たちが目指す言論カウンシル(仮称)は、様々な活動に手を広げることなく、この3点に絞って成果を出したいと考えています。

 その際に私たちが重視するのは健全な世論形成の役割です。課題解決は専門家や有識者だけが取り組むのではなく、多くの市民の理解と参加がなければ実現はできません。

 私たちが公開された議論を継続的に行い、その内容を多くの人に伝える努力を行っているのは、課題解決の意思を持つ世論の力がなければ、課題解決を民間から取り組むことは難しいと判断しているからです。「言論外交」など北東アジアの平和に向けた取り組みや、専門家による「政権評価」を公開された形で毎年実施しているのもそのためです。
 私たちはそうした姿勢を今後も堅持します。

 私たちが、言論NPOをカウンシル方式の組織に移行させることにしたのは、大きく言えば、二つの理由からです。

 第一は、言論NPOをこの国や世界、アジアの課題解決を目指す広範な有識者のプラット・フォームとしてより機能させることにあります。これは、民主主義や自由という規範が大きな試練に直面していること、さらにアジアの平和やこの日本の民主主義や将来に、責任を持つ、言論の舞台をより強化するためです。

 そして第二は、言論NPO自体を次の世代につなげる、恒常的な日本の民主主義のインフラとして発展させることです。

 言論NPOを日本の課題解決の議論の組織として次世代につなげたい、という決意は、昨年11月の言論NPOの15周年パーティで工藤が初めて説明したものです。

16.jpg


2020年の「言論カウンシル」発足に向けて、何を実現するか

 平成29年はこの「言論カウンシル」を目指す、具体的な準備の一歩を踏み出す年になります。
 ここでは3つの目標を掲げて取り組みます。

第一は、「言論カウンシル」の中核事業となる「世界の課題解決」、「アジアの平和構築」、「民主主義」の3事業で、2020年を最終年度に具体的な目標を提示し、そのための取り組みを開始すること。
第二に、カウンシル方式の組織体制に向けた具体的な作業を開始すること。
第三に、「言論カウンシル」を安定的に運営するための組織基盤を整えるために作業を開始すること

この内容について少し解説していきます。

まず、3つの中核事業の2020年までの展開は以下のように考えています。

 「世界的な課題解決」では、2017年3月に発足した「東京会議」を2020年の3月までに、東京発で世界の課題に取り組み、その結果をG7議長国に提言する、世界有数の会議体に発展させることが中核的な事業となります。

 すでにこの「東京会議」には、G7参加国のアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、日本に加えて、インド、インドネシア、ブラジルの、自由と民主主義を基本的な理念とする10カ国の世界を代表するシンクタンクのトップが参加することが固まっています。

こうした世界有数のシンクタンクが、東京を舞台にグローバルガバナンスや世界の秩序、世界の課題について話し合い、それをG7議長国にメーッセージを出すというのは、日本では初めての試みになります。

 こうした事業を通じて、世界課題に関する日本の影響力を国際社会で強化すると同時に、日本でグローバルイッシューに関する継続的な議論の舞台を機能させることが、「東京会議」の直接の目的となります。

参加が決まっている世界の10シンクタンク
 【アメリカ】外交問題評議会(CFR)
 【イギリス】王立国際問題研究所(チャタムハウス)
 【イタリア】イタリア国際問題研究所(IAI)
 【インド】オブザーバー研究財団(ORF)
 【インドネシア】戦略国際問題研究所(CSIS)
 【カナダ】国際ガバナンス・イノベーションセンター(CIGI)
 【フランス】フランス国際関係研究所(IFRI)
 【ブラジル】ジェトゥリオ・ヴァルガス財団(FGV)
 【ドイツ】ドイツ国際政治安全保障研究所(SWP)
 【日本】言論NPO


 「アジアの平和構築」は2020年に、北東アジアに平和秩序を構築するための多国間の対話メカニズムを発足を目指して作業を開始します。

 そのためには、日中平和友好条約となる2018年に日本と中国で、先の2013年に私たちが実現した「不戦の誓い」に続く、「平和宣言(案)」を合意する努力をするほか、日米間での対話を新設し、稼働させる必要があります。

 またこれまで私たちが行ってきた民間外交の舞台である、「東京-北京フォーラム」、「日韓未来対話」、さらに日米中韓の4カ国の世論調査を軸とした「4カ国対話」も、この目的と連動して機能させる必要があります。

 それぞれの国でこうした平和構築に向けて有識者や市民の理解を広げるために、こうした事業と連動して世論調査や有識者アンケートを導入することも考えています。


 「民主主義」の問題は2020年を目途に二つの事業を軌道に乗せようと考えています。
まず、日本の民主主義を鍛えるための政権評価に伴う公開型のフォーラムや政策点検を多面的に展開すると同時に、民主主義の立て付けである立法、行政、司法、さらにはメディアなどの機能評価に取り組むことです。

 また、国内のみならず世界やアジアに視野を広げ、多国間で民主主義の課題を議論し、その課題を世界の多くの人々と共有することも大事です。そのため、民主主義を軸とした「多国間対話」を軌道に乗せる必要もあります。今年度は、2016年に私たちが発足させた言論NPOと、インド、インドネシアのシンクタンクとの「アジア言論人会議」を東京で開催するほか、先進国間での民主主義対話を行う予定です。

 こうした3つの事業はいずれも2020年に成果目標を掲げており、この3年間で計画的に事業を進め、2020年にはそれらを言論カウンシルの中核的な事業として発展させていく予定です。


カウンシル方式に向けた組織課題とは

 こうした中核事業の稼働と合わせて、カウンシル方式への移行を考え、組織体制と資金の基盤整備についても計画的に進めなくてはなりません。以下は2020年までに実現すべき、組織、資金の目標です。

 資金基盤では、固定費を一般の寄付で賄う体制を確立すること、組織基盤では私たちのミッションに賛同する300氏のメンバー構築が、それぞれ3年後の目標となります。

 組織、資金体制はこの2020年には以下の形を考えています。

31.png


平成29年は、言論カウンシルの準備の一歩を踏み出す年

 言論NPOの平成29年の事業計画は、まさにこうしたカウンシル化の準備に踏み出す年として位置付け、次の取り組みを促進します。

(言論の事業を今年はどう展開するするのか)

 まず、中核3事業では以下の3つの事業に取り組みます。

 地球規模課題では、2018年3月に東京で開催する「第2回東京会議」を軸に、地球規模課題に関する様々なフォーラムを月ごとに行い、その内容は日本だけではなく、世界にも公表します。「東京会議」にはG7各国とインド、インドネシア、ブラジルの世界の10カ国を代表するシンクタンクの代表が揃い、次期G7議長国(カナダ)に提案します。

 また、そのプレ企画として「世界の民主主義」関するシンポジウムを、11月の16周年パーティーを軸に行うことを検討します。

 アジアの平和構築では、この事業の母体となるアジア安全保障会議(宮本雄二座長)を5月に発足させ、中国の共催者との共同の議論を行い、これらの成果を12月に北京で予定される、「第13回 東京-北京フォーラム」に提案します。

 またこれとは別に7月末に「日韓未来対話」を東京で開催するほか、9月に日米二カ国間の有識者間の協議を行い、北朝鮮問題をはじめ北東アジアの平和構築に向けた議論を開始します。

 民主主義に対する取り組みでは、政権評価の評価作業を年間通して行い、議論を公開すると同時に司法、立法、行政、メディアなどの民主主義の立て付けに向けた評価議論を開始します。また、インド、インドネシア、日本の3カ国で民主主義に関する世論調査を実施し、それをもとにアジアで民主主義を議論する「アジア言論人会議」を8月に開催します。

 このほか、日本の市民社会の受け皿として、非営利組織を強化するために「エクセレントNPO」を目指す取り組みを継続し、この評価基準に基づく表彰や議論を行います。


(言論の組織課題の今年の目標とは)

 また、「言論カウンシル」(仮称)のための組織基盤づくりとして、29年度は以下の事業を実施し、目標の達成を目指します。

 まず、言論NPOのメンバーは、言論カウンシルに賛同する有識者を中心に200人を目指し、計画的に増員を進めます。

 中核事業を推進する3つの委員会(北東アジアの平和構築を目指す「東京-北京フォーラム」実行委員会、東京会議の運営委員会であるWAC(ワールド・アジェンダ・カウンシル)、民主主義の関する事業を行う政策評価委員会(仮称))のほかに、言論カウンシルを支える会(仮称)や、カウンシルの実現するための組織課題を検討し、それを実行する準備委員会を立ち上げます。

34.png


 言論NPOが、カウンシル化に向けた準備と連動して29年度に重点的に取り組むほかの課題は以下の3つです。

(戦略的な発信計画)

 言論NPOの言論活動がミッション基づいて、多くの有識者や市民の判断材料となり、また健全なオピニオンの形成に強く寄与するため、今年からより発信を強化します。そのために専門のスタッフを配置するほか、直面する様々な課題について言論NPOとしての論点やアジェンダを適切に発信に発信できるように発信企画のための体制(外部専門家を交えた編集委員会)を整えます。

 議論発信は国内外に向けて行われ、ウェブのアクセス数を現状の3倍程に拡大します(昨年の実績は年で411,836ページビュー)。

(組織基盤の整備)

 言論NPOの活動拡大に伴い、それを支えるバックオフィスの強化を行うために、組織ガバナンスの見直しと改善を行います。また、組織体制や事務局機能も3年後のカウンシル化を意識した強化を行います。さらに、理事会に組織担当の理事を設け、理事会と連動してこれらの作業を行うようにしていきます。
 
(会員、寄付、助成金戦略)

 言論NPOの経営基盤をより広範な社会の指示や理解に支えられるものとするために、戦略的な発信に合わせて、幅広い寄付を集めるための取り組みを行います。また、11月の設立記念日にドネーションパーティを計画います。さらに、国内外の助成機関に言論NPOの事業への助成申請を計画的に行い、特に欧米の財団への申請を強化し、その一環として、ワシントン窓口の設置も検討します。

 また、会員や幅広い人に言論NPOの議論をより知っていただき、参加してもらうために各種フォーラムや、勉強会などの回数を増やしていきます。これらの議論は可能な限り、インターネットでの中継を含め、公開で行っていきます。

61.png

33.png