言論NPOとは

平成19年度 言論NPO活動報告

平成19年度活動報告

 言論NPOは平成13年11月設立以来、今の時代にしっかりと向かい合う建設的で当事者意識を持った議論の舞台を作るべく、十分ではない体制や基盤の中でも、多くのメンバーの協力を得て、活動してきました。
 日本の言論やマニフェストの現状は、昨年7月の参議院選挙の結果、野党が多数を占め、衆議院と参議院が対立する状態による政治の停滞により、社会保障、税制改革、地球環境問題、少子高齢化社会などの課題が山積しており、私たちのミッションである質の高いしっかりとした言論の役割を一層問われているように思われます。
 私たちが所期の目的を達成するためには、克服しなければならない課題である議論の発信力の強化と質の高いコンテンツの制作を安定的に、且つ継続的に行える体制づくりが必要です。平成19年度はその事業計画で掲げました課題「公開から参加型の議論循環を構築」、「自立した非営利組織の経営基盤の構築」に向けて活動いたしました。


事業の成果

1)質の高い議論の舞台の形成と議論の発信

2つの重点活動

イ.マニフェスト評価

 政党が選挙のときに公表するマニフェスト(政権公約)とその実行の評価を行い、その内容を公開することは、有権者主体の民主主義のインフラ形成の一端を担うために取り組んだものであります。専門家等のご協力を仰ぎ、国政マニフェストと政府の政策実行の評価をこれまで3回行い公表しました。昨年度の「マニフェスト評価ブログ」で公表すると共に、言論ブログ・ブックレット「安部政権の一〇〇日評価 -有識者350人の発言-」の発行、更に、安倍政権について有識者5人の活発な議論を展開し、官邸側の発言を得て、それらをウェブで公表すると共に「美しい国とは何か -安倍政権一〇〇日評価 議論編-」を発行しました。
 当年度は平成19年7月29日の参議院選に対応して、7月1日に開催された21世紀臨調の政権公約評価大会で言論NPOの評価基準による安倍政権の実績評価と各党のマニフェストの評価結果を発表すると同時にウェブで詳細を公表しました。この内、安倍政権の実績評価については言論ブログ・ブックレット「安倍政権の通信簿-政権300日の実績を評価する-」を発行しました。同時に、2007年参議院選の公約検証として分野ごとに15人の有識者のインタビューをまとめた言論ブログ・ブックレット「日本の政治を採点する」を発行しました。
 また、ヤフー「みんなの政治」のウェブサイトにも言論NPOのマニフェスト評価議論を常時掲載しており、内容が公開されています。

ロ.「東京-北京フォーラム」

 平成18年8月に東京で開催した「第2回東京-北京フォーラム」では、9月の自民党総裁選で次期総裁が確実視されていた安倍官房長官が参加し、安倍氏の発言を契機に日中両国関係改善、首脳会談再開の扉を開く歴史的な役割を果たしました。
 平成19年8月の北京での「第3回北京-東京フォーラム」にも安倍総理(当時)のメッセージを届けました。今回のフォーラムは、分科会を1つ増やして6分科会とし、前回では2分科会が非公開であったが、代表工藤の強い意思で中国側と交渉した結果、全ての分科会が公開されました。日本側から5人の政治家を含め幅広い分野から総勢36人のパネリストが訪中し、日本側の傍聴経済人は延べ1,000人に達しました。中国側は外交部門のトップを含め政府要人が数多く参加しました。特に北京大学の分科会会場では、両国政治家と200人以上の大学生と大学院生が本音の対話を行い、その内容はインターネットやテレビを通じて中国内外に中継され、まさに私たちが目指す参加型で公開された本音の議論が実現しました。
 一方で、政府間の関係改善の動きで両国の世論にも改善の兆しが見られ始めています。私たちはこれを分岐点と見て、フォーラム自体をさらに進化させ、日中関係やアジアのさらなる進歩と共同歩調をとれる対話の舞台の創造に向けて本年9月の「第4回東京-北京フォーラム」の準備として、実行委員会メンバー33名の決定と会議開催(3月4日)、日程・会場の決定、打合せのための北京出張を行いました。
 フォーラム当日には、直前に実施した日中共同世論調査の結果に基づき、両国民の認識やギャップを埋めるための議論が展開されました。北京-東京フォーラムの議論の内容はウェブサイトに公表すると共に、毎年、報告書にまとめあげて発行し、公開しました。
 さらに、これまで4年連続で実施しました日中共同世論調査の最初の3年間の比較分析から明らかになった、自分たちのことを相手はどう見ているのかについて、言論ブログ・ブックレット第11号「中国人の日本人観 日本人の中国人観」の題名で平成20年5月20に発行しました。

2)ブログ機能によるウェブサイトの議論発信の充実

 ブログの画面をさらに充実して、読者との双方向の議論発信へのアクセスをしやすくしました。(1)従来の「言論ブログ」を大幅に拡大し、特定の議論テーマを軸に有識者が問題提起を行い、アンケート等とも組み合わせながら、そのテーマについての参加型の議論をキャンペーンの形で行いました。 (2)「マニフェスト評価ブログ」では、マニフェストの評価会議の内容や政府の政策評価での重要な論点に対する有識者の議論を公開しています。(3)「メディア評価ブログ」では、メディア報道を複眼的な視点から論評を行い、さらにその論点を深めるために様々な問題提起を行っています。(4)「工藤ブログ」では、代表の工藤が言論NPOの議論づくりのための様々な論点やその過程における思いを文章や動画で公開しています。(5)「東京-北京フォーラム」では、立ち上げから毎年のフォーラムの全貌が記載されています。(6)「言論ブックショップ」を開設。言論NPOが出版した言論ブログ・ブックレットや書籍、報告書の紹介、言論NPOメンバーの出版書籍の紹介と購入ができるサイトです。
 また、効果的に読者を惹きつけるように動画による発信を頻繁に行ない、様々な有識者による質の高い議論を発信して充実させました。
 更に、「言論NPOとは」を飛躍的に充実させ、アカウンタビリティーについて、自己評価、事業計画・報告、収支報告を公表し、代表・役員及び言論NPO参加者の紹介として写真・プロフィール・コメントを掲載しました。メールマガジン(登録者約2,700人)を定期的に発行し、会員以外の一般ユーザーに対する情報提供、情報公開を更に向上させました。
 この結果、ウェブサイトの閲覧状況は平成19年7月には6万3千人のアクセスを記録、平均月間アクセスは前年より約1万人増の3万1,400アクセスとなっています。

3)その他のコンテンツ活動

 イ.地方再生戦略会議

 言論NPOではこれまで、ローカル・マニフェストの評価を行うための基準作りに取り組み、地方の人も自治体選挙とその後の政策実行を評価できるような評価基準を公表してきましたが、これを「地方の自立・再生」のための実質基準に変え、さらに地方の自立に戦略提言をできる有識者の地方再生戦略会議を平成17年12月に発足させました。平成18年度での北海道の自立再生戦略会議による地方との議論協働に引き続いて、当年度は4月8日の統一地方選での知事交代を機に「日本の知事に今、何が問われているのか」の議論を開始しました。さらに、8知事とのインタビュー内容をウェブで公表すると共に、それらをまとめた言論ブログ・ブックレット「日本の知事に問う-有識者200人の診断 アンケート編-」「知事の主張2007-問われる自立と経営の意思 発言編-」を発行しました。
  

 ロ.非営利組織評価研究会 

 2008年はNPO法が施行されて10年という節目の年に当たります。言論NPOは、市民が積極的に発言し行動できる社会を実現するために、非営利組織評価研究会を通して議論を行なっています。昨年11月に発足したこの非営利組織評価研究会では、有識者へのヒアリングを通してこの研究会をNPOに関する歴史的視点と国際的潮流をつかむための「基礎研究」の場とし、「財務的に良好なNPOの抽出」と「イノベーションを可能にする条件」をテーマに議論を行なっていく方針のもと、本年3月まで5回の会議が開催され、工藤代表の司会によるゲストスピーカーを中心にした議論を行ないました。
 私たちは、自発的に「公」を担い、経営的にも持続可能なNPOの実現の可能性を議論するとともに、言論NPO自身がそのような存在になるために何が必要かを、多くの参加者の力を借りて考えています。
 

ハ.アジア戦略会議  将来ビジョンについての対案づくり

 日本の将来を巡る議論としては、日本が目指すべき将来構想の選択肢を社会に提案するため、私たちが定めた5段階の戦略形成の方法論に基づいて、日本の将来構想に向けた議論を引き続いて行い、それらをウェブサイトで公表しました。
 平成19年度のアジア戦略会議は、前年度に引続き8回開催して、現在、アジアや世界の中長期的な潮流と、その中から日本に問われる本質的な課題が何かについて、再検証の作業を行っています。


2.事業の総括

経営と議論活動のガバナンス強化

 私たちは平成17年度の寄付金無税化に際して、私たちが行っている言論活動が非政治活動、非宗教活動であることを評価するため、アメリカのIRSの評価手法を参考にした「自己評価システム」を日本で初めて取り入れ、その内容を会員以外の第三者の有識者である言論監事に判定していただくシステムを導入しました。これは公益活動を寄付市場に開かれた自己評価で評価し、その判断を市場にゆだねるという日本では画期的なものであり、毎年の総会でこの自己評価を公開しています。
 私たちがこうしたガバナンス対応を重要視していますのは、言論NPOの活動が政府や特定の政治などに影響を受けるのではなく、日本社会に健全で質の高い言論や政策論議を取り戻し、その内容を有権者に提供するという自発的で中立的なミッションに基づいていることを、ガバナンスの面でも設計思想を統一するためです。
 言論NPOの活動はこれで会計、業務、言論の3つの監事でチェックされることになり、さらにアドバイザリーボードから助言などを受けています。

活動の状況

イ.

 言論NPOには、日本の将来に対して真剣な議論形成を求める民間経営者、官僚、エコノミスト及び多様な分野の学者・研究者など会員以外の方も含めて約500名の方々が個人の資格で活動に参加しており、議論形成や成果報告あるいは提言の作業に協力し、あるいは携わっていただいています。

ロ.

 平成20年3月末現在で理事10名、監事1名、言論監事2名、会計監事1名、常勤雇用者3名、派遣社員1名、アルバイト6名の計24名に加え、委託業務、学生インターンをはじめ多くのボランティアの参加を得て、事務所運営及び言論活動の本格的な展開を行っています。

ハ.

 当期末現在の会員数は、定款の規定により、退会届提出者、死亡者・連絡先不明者、継続して2年以上会費を滞納した会員資格喪失者を除外した結果、正会員の基幹会員76名及び法人会員13社で、その他会員の一般会員は98名及び学生会員3名の合計190名となっています。 尚、本年度の新規会員数は基幹会員3名、法人会員0、一般会員4名の合計7名となっています。