平成22年度事業計画
健全で強い民主主義が問われている中で、健全な言論の舞台を構築するという、言論NPOの所期のミッションはこれまでにも増して重いものとなっております。
平成22年度は、そのミッションの達成に向けて活動を大きく進めるために、参加型・提案型の議論づくりと資金基盤の多様化に目的を持って取り組み、来年の設立10周年に向けて3ヶ年計画の達成のために尽力してまいります。
I. 参加型で提案型の議論を完成させる
言論NPOの議論は、当事者意識を持って今の時代に向かい合い、建設的で質の高い議論を行うことで健全な民主主義を作ることを目的にして行われています。
しかし、議論自体の発信力を高めるためには、言論NPOの活動や議論の内容が顧客視点で分かりやすく公開され、且つこの議論の舞台により多くの人が参加しなければなりません。
平成22年度は、昨年度リニューアルしたウェブサイトを中心に、4つの言論「政治に向かい合う言論」、「世界とつながる言論」、 「市民を強くする言論」、「次の日本をつくる言論」を柱に参加型の議論を完成させます。特に「市民を強くする言論」内で、市民が社会の課題解決に向けた議論を行なえる議論のプラットフォームを作ることで、言論NPOのミッションを達成していきます。また、今年度は言論NPO内の議論から提案を出していく仕組みを構築します。言論NPOの議論をより参加型で市民に開かれたものに変え、それと同時に提案を出していくことで、議論をより影響力のあるものへと発展させていきます。
言論NPOが取り組む4つの議論とは
1.「政治に向かい合う言論」
今年度もウェブサイトなどを活用して、政権の実績評価やマニフェスト評価を公開すると同時に、そのための議論を継続的に行います。
22年度は7月の参議院選挙でのマニフェスト評価を皮切りに、政策評価のセミナーやマニフェスト評価塾(仮称)など評価のプロセスに様々な方が参加できる仕組みを導入し、自ら政治を判断できる市民の育成に力を入れます。
また、定期的に政治家を招いて政策を議論するフォーラムを開催し、多くの市民が政策を学び政治を評価するための機会を提供していきます。
それ以外にも、マニフェスト評価委員の議論を会議として定例化し、その内容をウェブサイトにて公表したり、中継を行うことを通じて、議論に参加できる仕組みを導入します。また政治家に直接アンケートを行ったり、議論に参加していただくことで、将来の政治家評価に向けた準備を開始します。
2.「世界とつながる言論」
日中の国民間の相互理解を深める場として、今年は第6回目の東京-北京フォーラムを東京で開催します。
言論NPOが5年間継続して行なった日中共同世論調査では、両国民間の相互理解の改善は進んでおらず、両国民が本音で議論を出来るプラットフォームの必要性が高まっています。第6回フォーラムでは、政治対話、経済対話、メディア対話、安全保障対話、地方対話の5つの分科会が行われますが、いずれも会場とパネリストが一体となる参加型の対話を行い、またいくつかの対話では、その内容をインターネットで中継し、会場外の人も参加できる仕組みを導入します。
さらに、経済対話や地方対話などでは、日中のパネリスト間で専門的な議論を進め、両国政府に提案できる仕組みを導入します。
3.「市民を強くする言論」
「市民を強くする言論」では、「強い市民社会」を作ることを目標に、参加型の議論のプラットフォームをつくります。今年初めに組織した6人の専門家の編集委員会を軸に、市民社会や市民が向かい合う様々な政策課題に関する議論を行うほか、各分野で活躍する市民の紹介などを行い、その内容をウェブサイトにて公開します。それと連動して公開型のフォーラムを開催し、そこにたくさんの市民が参加し議論ができる舞台を作ります。
市民社会での参加型の議論の舞台づくりと同時に、言論NPOは昨年開始した「エクセレントNPO」を目指す活動を活発化させます。市民社会を中核として担う非営利組織の質の向上を図ることを目的に、7月に「市民会議」を発足させ、エクセレントNPOを目指す宣言団体の募集やエクセレントNPOの認証といった活動を年内に行うことを目指しています。
4.「次の日本をつくる言論」
ここでは今年から、「みんなで考えよう日本の将来」をテーマに会員を中心とした民間審議会を開催し、時間を区切って参加型の討論を行い、提案を公表します。こうした議論作りは、政策の評価などと違い、議論の力で課題に向かい合うもので、議論の柱として今後注力していく予定です。
3ヵ年計画の最終年である23年度までに、1テーマ約20人で構成される議論チームを10テーマ行う体制をつくります。
22年度は、「マニフェスト」、「東京-北京フォーラム」、「市民会議」をこうした参加型の議論コミュニティとして位置付けると同時に、「メディアの問題」や様々な政策課題を軸に議論チームを発足させます。この中の議論を経て得た結果を対外的に提案し、言論NPO内で行なわれている議論をより影響力の高いものにしていきます。
また、この議論チームをつくることで、会員組織の強化を図ります。議論チームを基幹会員を中心に組織させ、常に言論NPOの会員がウェブサイト上で議論をしている体制を整え、会員の定着と同時に会員増加にもつなげていきたいと思います。
II. 資金基盤の多様化に目標を持って取り組む
昨年から始まった3カ年計画で、寄附・会費収入・事業収入の3つの資金基盤を多様化させることを目標に掲げています。今年度も資金基盤をバランスのとれた形にすると同時に、資金基盤を拡大することにも取り組みます。
22年度は、会費収入と事業収入で5割、残りの5割を寄附で支えるということを目標にしています。そのために、会員組織及び顧客基盤を拡充することによって、会費収入を増やし、フォーラム・セミナーや書籍の出版での事業収入を確保することを目指します。
1.会員組織・顧客基盤の拡大
言論NPOの活動のミッションに共感する多くの人に支えられ、一緒に活動を展開できるようにするため、目標を掲げて会員を増やす努力を行います。
目標は基幹会員(メンバー)を140名、一般会員を500名。メンバーは言論NNPOの社員ともいえる存在であり、可能な限り言論NPOの活動に参加していただきます。たとえば、前述の「次の日本をつくる言論」内の民間審議会に委員として議論作りにも参加していただきます。一般会員については、セミナーや公開フォーラムを開催することなどを通じて、積極的に参加を呼びかけていきます。これらは今年の秋から集中的に行い、必ず目標に向かって成果を出します。これらの活動を通じて、会費のみで事業に必要な費用の2.5割支えるという仕組みを構築し、言論NPOの活動を支える収入基盤をつくります。
こうした会員組織を構築するために、顧客基盤の拡充に今年は特に力を入れます。
まず無料会員となるメイト会員やフォーラムなどの活動参加者を年間で1,000人に引き上げます。またデータベースへの登録規模を1万人に(現在5000人)に倍増します。さらにウェブサイト訪問者数を年間で30万人へと昨年比3倍増に増加させます。広報体制を強化することで、メディアに対する言論NPOの露出を増やします。
さらに、こうした顧客基盤の拡大に合わせてそれらを会員やフォーラムやブックレット販売などの事業との連動を進めます。さらに幅広く小口寄附をお願いする呼びかけも行います。
また、11月の創立9周年には、チャリティ・パーティーを予定しており、言論NPOの活動の参加者と交流を行なうだけではなく、積極的に寄附を集めていきます。
これらの会員・顧客基盤の強化・拡大による会費収入と事業収入の増加及び寄附金収入を増加することにより、平成22年度は、会費収入および事業収入が全体の5割、残りの半分を寄附収入で成り立たせる資金基盤の多様化を実現します。