3月18日、都内にて、言論NPOの第2回アドバイザリー・ボード会議が開催されました。今回は代表工藤のほか、安斎隆氏(株式会社セブン銀行代表取締役会長)、福川伸次氏(財団法人機械産業記念事業財団会長)、増田寛也氏(株式会社野村総合研究所顧問)、宮内義彦氏(オリックス株式会社取締役兼代表執行役会長・グループCEO)、宮本雄二氏(前駐中国特命全権大使)の5名と、言論NPO理事の石黒光氏(東京大学監事)、田中弥生氏(大学評価・学位授与機構准教授)がオブザーバーとして参加しました。
まず工藤は、「未曽有の震災を前に、言論NPOとして何が出来るのかをこの間考えてきた。私たちは直接的な救済はできないが、今後の復興を見据えながら、自分たち自身がこの社会を作っていくという変化をつくり出すため、今こそ考えなければならない情報を共有し、発信していく」と述べ、16日に行われた緊急対談「被災地のために、僕らは何をすべきか」への反響の大きさに触れながら、言論NPOの当面の活動方針について説明しました。
増田氏は、今回の地震により、津波災害、原発災害、そして計画停電も含めた経済への影響という三つの危機が同時に起こっていると指摘した上で、「これまでの災害では、首都圏の生活そのものが大きな影響を受けたことはなかった。今回は、中央政府、地方政府を含め、日本の統治や政治を抜本的に直していくということでないと、危機を解決することはできないだろう」と述べました。
宮本氏は、「当面の課題が、被災者の救済に叡智を尽くして徹底的に行なうことであることは間違いない」と強調した上で、「政府ではなく、市民からの発信を具体的な形で提案し、実現するような、市民参加型の民主主義が今後ますます求められるだろう」と述べ、復興に向けて、全く新しい発想でこの危機を乗り越える段階に来たことを指摘しました。
福川氏は、初動作、中長期の情報管理、長期的なガバナンスの改革を分けて考える必要性を指摘し、「救済という第一フェーズでは、何よりもまず公的セクターが全力で動くことだ」と述べました。また、そのプロセスにおける言論NPOの役割についても触れ、「正確な情報を誰がいつどう届けるのかという情報管理の問題や、危機管理を含めたガバナンスのあり方など、今後全面的に組み替えなければならない課題は多い。そうした課題をきちんと社会に対して訴えていくことこそ、言論NPOの役割ではないか」としました。
安斎氏は、「危機管理は権限の集中であり、こうした事態では、リーダーがリーダーとしてきちんと動くことができる仕組みを作らなければならない」と指摘するとともに、「ある意味では、今こそこの国を大きく変える機会であり、言論NPOは日本の将来に向けた大きな青写真を描き、社会に示していくべき」として、言論NPOが果たすべき役割の方向性を示しました。
宮内氏は、この間の政府による対応を振り返り、今後危機管理を含めた統治のあり方を抜本的に見直す必要性を強調しました。また、「現在のような自粛ムードが続けば、日本全体が沈んでしまう。菅首相は、国民に対して復興に向けた着実な一歩を踏み出すためのメッセージを送るべきだ」と述べ、政治が強いリーダーシップのもとでこの状況を打開すべきとしました。
最後に宮本氏は、「皆さんの意見に共通しているのは、今こそ、前向きな発想をもとに日本の新しい時代を一人ひとりがつくっていこうということ。未来に向かって自信を持ってやっていく、その自覚をより多くの人々に持ってもらいたい」と述べ、強い市民社会に向けての一人ひとりの動きを呼びかけました。
工藤は、「敗戦直後、石橋湛山は「日本の進路、前途は実に洋々たり」と訴え、その後の日本の復興の礎を築いた。私たちも、今こそ、一人ひとりが誇りをかけて動かなければならないし、言論NPOはそうした動きを支える議論を全力で行っていきたい」と、今後の活動への決意を語り、本会を締めくくりました。
言論NPOは、被災地の救出から復興までを視野に入れて、そのために緊急に必要な情報を皆様にお伝えし、共有するほか、この間起こったことを冷静に分析しながら、これからの復旧や復興までを視野に入れて、議論の力で私たちなりの役割を果たしていきます。ぜひ、ご注目下さい。