長 有紀枝
令和5(2023)年度、言論NPOの「非政治性・非宗教性」に係る自己評価結果に関する、言論監事の見解を述べさせていただきます。
まず、この自己評価は第一号報告に記載された規定の評価方法に基づいて行われており、その全ての手法・プロセスに問題がないことを確認しました。また、評価結果に関しても、その内容から、「非宗教性」、「非政治性」を完全に満たしています。
以上から言論監事として手法・プロセスに加えて、結果についても問題がないと判定します。
次に、監事意見を申し述べさせていただきます。まず、この評価の際に痛感することですが、以前にもまして現在は、言論NPOの多くの行動・発言が政治的な主張と解釈されかねない局面です。それにもかかわらず、創設以来23年間、言論NPOが自身の活動評価のために独自に作り上げた中立性の評価を行い続け、活動の根幹に据えていること自体に、改めて敬意の気持ちを表したいと思います。
政治課題に取り組むことと、政治的な活動を行うこととは明確に区別されるべきものです。言論NPOはこの点をしっかりと認識し、自らの使命に挑み続けています。その一貫とした姿勢を、高く評価したいと思います。
世界では協調よりも対立の傾向が強まり、世界の多くの人がその立ち位置を問われる事態です。言論NPOは、その非政治的、非宗教的姿勢や立ち位置を一層明確にし、政治的に困難であると思われる事案についても、臆せず、民主的なルールと信念に基づいた、国境を越えた協力と民間対話を行い続けています。
特に「東京会議2024」で私たちが注目したのは、世界の多くがそれぞれのポジションからしか発言ができない中、民主主義国のシンクタンクとして初めて、欧米の国々に広がるダブルスタンダードを議論し、「法の支配」や「人間の尊重」の貫徹を、議長声明として世界に発表したことです。日本発のこのメッセージに日本の未来の可能性を感じたのは、私たちだけではないはずです。
しかも、その声明のために、幅広い有識者にアンケートを行い、多くの人の発言に耳を傾け、また多くのフォーラムを通じで、多くの人の意見を集めて議論に反映することを徹底している、と伺いました。こうした開かれた姿勢こそが、課題解決に挑む意思と大きな共感の輪を多くの市民層に広げるのだと思います。
言論NPOの活動自体は依然、経済的にもまだ厳しい局面にあると聞いています。
しかし、世界の不安定化が強まり、民主社会の後退もこの日本で顕著になる中だからこそ、これまで以上の努力が問われる局面です。
支持基盤や共感を大きく広げ、世界を代表するシンクタンクとして世界の課題の解決に役立つ存在になることを心から期待しています。