長 有紀枝
1.言論NPO「非政治性・非宗教性評価」結果について
言論NPOにとって、特定の利害に基づかないという意味での中立性及び非政治性・非宗教性は決定的に重要であり、こうした中立性の自己評価を継続的に行い続けてきたこと自体に、まずは敬意を表する。同時に、政治課題に取り組むことは言論NPOのミッションそのものである。政治課題に取り組むことと、政治的な活動を行うこととは明確に区別されるべきである、という点を記したい。
そうした理解に基づいて、令和4(2022)年度、言論NPOの「非政治性・非宗教性」に係る自己評価結果に関して、言論監事の意見を次のとおり述べさせていただく。
言論NPOは、第一号報告に記載された規定の評価方法に基づいて自己評価を実施しており、言論監事として、その手法・プロセスに問題がないことを確認した。
また、評価結果に関して、「非宗教性」、「非政治性」を完全に満たしていると判定した。
以上から言論監事として、手法・プロセスに加えて結果についても問題がない、と判断している。
2.今後の課題
令和3年度はコロナウイルスの感染の影響もあり、言論NPOが取り組む多くの活動は自粛に追い込まれ、8月までは休業状態を続けながら活動を行っていたこと、また寄付や会費などの減少から、かなり経済的に厳しい状況に直面していると聞いている。
しかしながら、ロシアがウクライナへ侵攻する等、今まで以上に世界が不安定化し、世界が分断に向かって動き出す中、世界のシンクタンクとも連携しながら世界の分断をこれ以上悪化させず、アジアの紛争を回避すること、そして、民主主義の修復に向けた動きを始めるという、言論NPOの令和4年度の活動は非常に意欲的であり、日本や世界にとっても非常に重要なことだと考える。
そうした目標を多くの人たちに共感してもらい、中立・独立の立場から社会一般に支持されるために、活動の参加者を大きく広げること、また資金源の多様化を進め、企業からの寄付、行政や助成財団からの資金の他、会員と個人寄附を拡大していくことは、今後の活動にとっても非常に重要である。
こうしたことを実現するために、アドバイザリーボードや理事会体制の見直し、企業の中堅、若手経営者、女性などからなる副理事会の創設など、組織の抜本的な見直しに着手したことは評価できる。さらに、令和3年度は「ふるさと納税」を利用した寄附の目標である2000万円を達成したことは一つの成果と言える。
一方、議論の中身についても、国内外の課題を市民自身が考えるための取り組みである「知見武装」を開始し、フォーラムの議論の中身の刷新、さらにフォーラムでの議論の解説、社会の問題や時事問題について解説する工藤泰志のYouTubeチャンネルを開設するなど、発信方法の全面的な見直し作業を開始したことは評価できる。ただ、それを継続して行っていける仕組みをどう作り上げていくか、さらにSNS等を使った発信をどう行っていくのかが今後の課題と考える。
言論NPOは設立以来、民主主義の強化をミッションとして掲げ設立20周年という節目を迎えた。民主主義が世界中で後退し、国際社会が不安定化する今だからこそ、言論NPOの活動そのものが問われているとも言える。設立時のミッションの実現に向けて、幅広い市民や有権者の支持を集める、日本を代表するシンクタンクへの発展を期待している。