言論NPOとは

令和5年度活動報告

昨年度の事業計画で掲げた2つの課題


  • 「東京会議」を最重要な取り組みとし、「東京-北京フォーラム」と二枚看板に並べる

  • 言論NPOを次世代に繋げる持続性のある組織に刷新すること
  • (ア) 数値目標は3カ年で、活動費の全額を会費と寄付で賄うこと
    (イ) 活動の理解者を会員以外にも幅広く広げ、支持層を大きなものにすること


「東京会議」と「東京-北京フォーラム」は、言論NPOの活動の二枚看板に


「東京会議」は、世界を代表する国際会議に位置付けられた

p1.jpg 令和5年度の最重要課題は、「東京会議」を最重要な取り組みとして「東京-北京フォーラム」と並ぶ二枚看板に育てることでしたが、「東京会議」を取材したメディア報道では、ミュンヘン安全保障会議、ライシナ対話(インド)の議論とも遜色ないものだったと報道する等、「東京会議2024」は間違いなく、世界を代表する国際会議に位置付けられたと考えています。しかし、世界的な地位を確立するために「継続」と毎回の「進化の努力」が必要だと考えており、「東京会議2025」に向けた準備を開始しています。

 本年の「東京会議」が成功した点として、まず、民主主義国10カ国のシンクタンクのプレジデントが集まったほか、マーシャル諸島共和国のヒルダ・キャシー・ハイネ大統領が、現職大統領として初めて公開セッションに参加。さらに、世界貿易機関(WTO)のンゴジ・オコンジョ=イウェアラ事務局長をはじめとする国際機関の要人も数多く参加する等、現役の国家首脳や国際機関のトップをはじめ20ヵ国、10の国際機関から38名が参加したことが挙げられます。

 さらに、戦争によって世界の分裂の懸念が高まる中で、ルールベースの世界を目指すために「ダブルスタンダードではなく、法の支配の貫徹を」といった議長声明を東京で発表できたことが挙げられます。こうした問いかけが、世界的にも日本外交の在り方を示すものとして、非常に注目を集めました。

p2_1.jpg その結果、読売新聞が一面で取り上げた他、NHK、毎日新聞にも大きく取り上げられ、また、共同通信は、ミュンヘン安全保障会議、ライシナ対話(インド)と並ぶ国際的会議として「東京会議」の内容を紹介し、国際協力の回復に焦点を当て、日本から発信する会議と位置付けた上で、「国際課題への取り組みを一致して進めていくことへの熱意や連帯感では、他の2つの会議を超越していた」と評価しました。

 さらに、「東京会議」の体制づくりとして、この会議の戦略的な方向性や、世界的な課題にきちんと見合うための論点などを提言するために、2022年に発足した評議会には、昨年度の8氏に加えて、第一生命ホールディングス取締役会長の稲垣精二氏、日本経済団体連合会副会長兼事務総長の久保田政一氏、丸紅株式会社取締役会長の國分文也氏、日本生命保険相互会社代表取締役社長 社長執行役員の清水博氏、三井住友海上火災保険取締役会長 会長執行役員の原典之氏、住友商事株式会社代表取締役会長の兵頭誠之氏が新たに加わり、14氏の体制になるなど、体制づくり、支援の輪も広がっています。


4年ぶりに対面で開催された「東京-北京フォーラム」は両国で大きな注目を集めた

 「東京-北京フォーラム」でも、世論調査と連動する形で、中国と世界の課題について議論する方式が成功しました。

p2_2.jpg 令和5年度は、核に関する専門家が集ま舞台を民間部門で初めて設け、中国と議論を行いました。

 さらに、フォーラム前夜に行われた晩餐会には、岸田文雄・内閣総理大臣が平和や核の問題に踏み込んだメッセージを寄せる等、民間と政府が連携して、国際課題の解決に向けて、中国に協力を求める大きな流れが確立しました。

 2日間にわたる議論の成果文書として最終日に発表された「北京コンセンサス」では、5点について日中間で合意。これを踏まえ、今年45周年を迎えた日中平和友好条約の再出発や日中両国が世界やアジアの平和や課題に協力して取り組むために、一層の努力を行う決意を両主催者が示すことができました。

 こうした取り組みは、メディアでも多く取り上げられ、毎年発表している日中共同世論調査の他、「東京-北京フォーラム」は、それ自体がニュースとなり、議論の成果が確認しただけでも313件の報道、連日の報道や1ページを使った主要紙もあるなど、大きな注目を集めたほか、広く両国の世論に向けて発信されました。

 さらに、会場に多くの聴衆が詰めかけると同時に、日本側と中国側それぞれでオンラインでも配信され、昨年を上回る両国の市民延1690人を超える傍聴・視聴につながりました。


 以上の結果、言論NPOの中核事業として、「東京会議」と「東京-北京フォーラム」を、言論NPOの活動の二枚看板に位置付けることができました。


その他、「アジア平和会議」の開催と「日韓共同世論調査」も発表

p3.jpg その他、「アジア平和会議2023」では、3年振りに4カ国からトップレベルの軍事・安全保障、外交の実務者・専門家20名が集まりました。この会議は、米中対立が続く中で、米中が同じテーブルで外交や安全保障に関して議論する初めての民間の舞台で、非常に大きな注目を集めました。

 2日間の議論を通して、政府間外交に先んじて、民間主導のトラック2、トラック1.5の協議によって、地域の平和を喚起する世論を作り出し、課題解決に向けた機運を盛り上げることは重要だ、との認識で一致したものの、日米韓と中国の間で安全保障や外交に対する見解では平行線をたどりました。

 最終日に行われた公開フォーラムには、100名以上の聴衆が参加し、3年振りに開催された対面での議論を見守りました。

 併せて発表した「2023年版の北東アジアの平和を脅かすリスク」では、日米中韓4カ国の軍事、外交専門家が選んだ最も大きな北東アジアの平和リスクは、最多が「北朝鮮のミサイル発射などの挑発的な軍事行動」を挙げ、「北朝鮮が核保有国として存在すること」がこれに続きました。こうした結果を、複数のメディアが取り上げる等、調査結果にも注目が集まりました。

p4_1.jpg 11回目の日韓共同世論調査を実施し、その結果を日韓共同で記者会見を行い公表しました。ただ、この調査結果を踏まえて実施しいている「日韓未来対話」の開催については、韓国の主催者団体との認識の齟齬から、開催に至る合意ができず、対話の開催自体を見送ることとなりました。現下の日韓関係と緊迫する北東アジア情勢を鑑み、歴史的にも社会的にも必要とされる民間対話を作るために、開催に向けて韓国側主催者と交渉を継続していくこととなります。


持続性のある組織に刷新するという目標は道半ば

法人会員は増加したものの、個人会員は横ばい

 令和5年度の事業は、令和4年度から始まった三カ年計画の2年目にあたります。

 令和5年度の事業計画では、言論NPOを次世代に繋げる持続性のある組織に刷新するために、(ア)数値目標は3カ年で、活動費の全額を回避と寄付で賄うこと、(イ)活動の理解者を会員意外にも幅広く広げ、支持層を大きなものにすることの2点を掲げ、それぞれの課題に積極的に取り組みました。

 (ア)については、令和5年度末の月額コストで計算したところ47.5%と目標の約半分にとどまりましたが、一昨年度の34.5%よりは上昇しています。上昇の主な要因としては、法人会員の増加(3社)、並びにふるさと納税の増加が大きく貢献しました。

 一方、個人会員については、微増にとどまりました。

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会員の定着に向けて「2つの勉強会」を開始

 こうした会員の定着に向けて、令和5年度から「中国勉強会」「国際課題勉強会」の2つの勉強会を立ち上げました。前者は12回開催(4月から開始)し、延240人が参加、後者は4回開催(9月から開始)し、延51人が参加する等、会員ケアには確実に繋がっているものの、この場での新規の会員拡大にはつながっていません。


「言論フォーラム」を開催するも、会員を増やすという動きには至らなかった

 さらに、「言論フォーラム」を4月以降、令和4年度同様18回開催し、延63人の方がパネリストとして議論に参加しました。特に、令和5年度は各新聞社で、実際に政治の現場や、海外の支局で取材している現役記者・デスクの皆さんにもパネリストとしてご参加いただくなど、議論に厚みを持たすような努力を行い、延457人が聴衆として参加しました。

 ただ、参加者の多くは法人会員や個人会員、支援企業となっており、会員の定着に向けた動きの一つとしては機能しているものの、議論の裾野を広げ、一般の人たちの参加を増やし、会員化していくという動きには至っていません。
 

認知度向上に向けて始めた新たな取り組みは加速しました

 (イ)の活動の理解者を広げ、支持基盤を拡大させるという目標の実現に向けて、言論NPOがいかに日本や世界の未来にために本気で取り組んでいる団体なのかを、若い世代に知ってもらうために、SNS等を活用しながら、以下の取り組みを実施し、新しい試みの展開が大きく加速しました。

 具体的には、言論NPOのホームページが難しすぎて、どのような活動を行っているわからないという声に対して、1ページで分かる言論NPOと題したページを開設。さらに、活動内容を分かりやすく説明するために、学生インターンが言論NPOの「note」を開設し、発信を行っています。加えて、若者の視聴数が多いTikTok動画も2024年の2月から行っています。

 同時に、言論NPOの民間外交の取り組みについて、短い動画で分かりやすく伝えるために、工藤の民間外交の短編映画を2本完成させ、公開しました。

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活動が大きくなり、報道されているもののウェブサイトの訪問者数は減少

 しかし、令和5年度のWEBの訪問者数でみると136,187人で昨年と比べて1万人程度減少する結果となりました。

 活動が飛躍的に広がり、「東京-北京フォーラム」や「東京会議」を中心に、年間400件近く国内外のメディアに掲載されているものの、サイトの集客などには至っていないのが現状です。

 インターネットを通じが発信がまだ十分でないという課題は継続しており、今後、一層の発信を増やしていくこと、さらに他のメディアと連携し、顧客層を広げると同時に、外部から顧客を誘引するかも、今後の課題となっています。

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