こうした世界課題への取り組みは言論NPOの知名度を世界的にも拡大し、私たちが目指す活動や使命に対する協力や支援の輪も広がっている。
しかし、私たちが問題にすべきは組織の持続性である。言論NPOの活動は世界を代表する独立的なシンクタンクと競えるほどの高いレベルに至っているが、安定的にそれを継続できる体制ができていない。
依然、言論NPOの活動はこうした世界会議を運営することで精一杯の状況が続いており、会議の成功が活動自体の持続性を保証したわけでもない。
そのため、私たちは3カ年計画の最終年の今年、この問題に再度、しかも重点的に挑まなくてはならない。
昨年、私たちは言論NPOを次世代に繋げることができる組織に刷新するとの目標から二つの課題に取り組んでいる。
1)言論NPOの活動の固定費の全額を会費と寄付で賄うこと
2)言論NPOの活動やその目的を分かりやすく、幅広く支持者を拡大すること
である。これらはまだ目標達成では道半ばであり、これまで以上に注力することは当然である。
令和6年度はそれに「③言論NPOの組織を世界会議の運営に持続的に対応できるように刷新を検討する」ことを加える。
この三つの課題が私たちが取り組む最重要課題となる。
これらの成功のためには、会員運営体制の立て直しや若者層を対象としたSNSなどによる支持層の拡大等も必要である。会費や寄付などの自動決済、映像発信、TikTok等の配信、これまでの各種フォーラムや勉強会の刷新など既に手掛けているものがあるが、今年度はそれらを徹底的に展開し、会員基盤の強化を図りたい。
令和6年度には9月の「アジア平和会議」や12月の「東京-北京フォーラム」、そして来年3月の「東京会議」等の世界会議の開催や年間で30回近いフォーラムの開催も予定している。
世界の危機に挑む私たちの取り組みが、世界の平和と協力に貢献し続けるためにも、私たちは組織の持続性に一定の目途を付けなくてはならないのである。
令和6年度の組織課題の取り組み
私たちはこの3カ年計画で二つの組織目標を掲げている。
一つ目は、言論NPOの言論活動や組織活動の全てを、言論NPOへの会費や寄付で賄う体制を確立することである。
二つ目は、広く一般に言論NPOの活動を広げ、より多くの人に言論NPOの取り組みを理解してもらい、その輪を広げることである。
特に一つ目の目標は、言論NPOの活動の安定的な展開には不可欠であるが、この目標の達成度は昨年度で47.5%とまだ半分程度であり、現状は半分以上の本体財源が多くの国際会議の成否に依存している。この状況では、言論NPOの事業の中立性や持続性を確保することは難しい。
これを今年度は最低でも、本体財源の固定費用比率が7割台を上回ることを目標に会員基盤の立て直しを進める。
そのためには法人会員だけではなく個人の新規会員の拡大やふるさと納税などの寄付に組織を挙げて取り組むしかない。会員が増えるためには会員拡大に目標を持って取り組む他、組織の活動自体を活性化し、より多くの会員が活動に参加し、その輪を広げるための環境を整えることが不可欠である。
今期は以下、4点に取り組む。
- 第一は、ウェブサイトでの会員申し込みや寄付が簡易にできるようにWEBサイトを刷新することである。現在、ウェブサイトのリニューアルを行い、会員の申込や寄付の決済方法もウェブサイトで完結し、領収書などもマイページからダウンロードできるような環境づくりに取り組んでいる。8月頃の公開を予定している。
- 二つ目は、言論NPOの活動に連動した会員の参加の仕方を再設計することである。
- メンバー(基幹会員)は言論NPOの活動自体の中心的な参加者として期待され、少なくない人に理事や副理事などの他、勉強会の運営委員などをお願いしている。
- 基本的には、メンバーの言論NPOへの参加をどのように活性化させるか、がここでの課題となる。
そのためには、「言論フォーラム」やメンバー向けの「勉強会」に、より多くの会員が参加、発言し、交流の場を設けることで怪異活動の活性化させると同時に言論NPOの活動により積極的に参加し意見交換する場を拡大することである。
また、メンバーには言論NPOの中核事業である「東京会議」や「東京-北京フォーラム」に積極的に参加していただく他に、参加者が大きく増え始めた「中国勉強会」と「国際課題勉強会」の二つの勉強会はお互いが交流できる機会を増やすと同時に、運営を担う人を積極的に登用する。さらにもう一つの勉強会として、代表の工藤が言論NPOの活動状況を定期的に報告し、意見交換ができる場を立ち上げる。
一般会員については、毎月二回開催する「言論フォーラム」の活性化が焦点となる。これまで世界の課題に関するテーマが多かったが、今年からは民主主義の課題や政策課題など国内の問題も並行して開催する他、一般会員とメンバーが交流する懇談の機会を定期的に設ける。
さらに、大口寄付者や法人会員向けに別の勉強会の定期開催も検討する。
三つ目の課題は、言論NPOがどうしてその活動に取り組むのか、何を実現しようとしているのか、それを分かりやすく、かつ幅広い層に伝えることで、支持する層を増やすための努力である。
既に2本公開している言論NPOの民間外交等のドキュメンタリー短編動画の公開を進めると同時に東京会議の映像を公開する。また、令和5年度に一部開始したTikTok等のSNSを活用した動画の発信を本格的に進めると同時に、インターン等が言論NPOの活動をかみ砕いて若者層に発信する取り組みも継続して行っていく。
また、これらのSNS、動画公開と連携する言論NPOのホームページのリニューアルを完成させる。
四点目として、こうした努力の中で、言論NPOの活動を配信する無料登録者は5000人を超えているが、この登録者をさらに拡大する他、その層を対象に定期的にセミナーを開催し、言論NPOの活動を知ってもらいながら、会員になってもらう流れを作り出す。
これらはそれぞれ達成すべき数値目標があり、それを意識した取り組みとなる。
令和6年度の言論NPOの民間外交について
言論NPOは、令和5年度で取り組む民間外交は以下の3つである。
「東京会議」の次の5年の目標
「東京会議」の評価は世界的に高まっており、一部報道では、ミュンヘン安全保障会議、ライシナ会議など世界的な会議と並ぶ会議との評価もなされている。しかし、私たちの挑戦はまだ始まったばかりであり、この危機下の世界で日本から世界の課題に決定的なメッセージを提供し、日本の発言力を大きく向上させるとの目的はまだ途上である。
ただ、世界を代表する10カ国のシンクタンクや世界の課題に取り組む要人がこの会議に協力しており、世界の課題解決に向かう日本初の世界会議が動き出したのは間違いない。
「東京会議」の目指すべき目標は、民間主催の会議でありながら、世界の外交の舞台になっている「ミュンヘン安全保障会議」であるが、欧米の平和に立ち位置を置く「ミュンヘン安全保障会議」と異なり、「東京会議」は危機下の世界における協力を立ち位置として、もう一つの軸を世界に提起しており、この会議の影響力を拡大するための努力は今年も行われている。
問題はこうした世界を代表する世界会議を継続的に運営するための体制や体力を、まだ言論NPOが持っていないことである。
私たちが、今期の課題に、「言論NPOの組織を世界会議の運営に持続的に対応できるように刷新を検討すること」を加えたのはそのためである。この検討作業を言論NPOの理事会などを中心に始めることになる。
「東京-北京フォーラム」と次の10年に向けた取り組み
今年の「東京-北京フォーラム」は20回目の節目を迎える。米国の大統領選挙後の12月に開催されることがほぼ決まっている。
2005年の立ち上げ以降、どんな困難があっても一度も中断したことがないこの対話は、日中両国だけではなく世界的にも注目される影響力のある対話となっているが、今年の最大の課題は20回目の対話を成功させるだけではなく、この対話を「次の10年」に繋げることができるかである。
20回目の対話は、世界の危機が深刻化する中で世界の平和と安定のために、日中が協力するための歴史的な舞台とすべきだと考え、すでに中国側との協議が進んでいるが、次の10年の対話をどのように設計すべきかは、これからの課題である。
特に「次の10年」に向けて中国側では指導部の全面協力を獲得することも必須であり、まだ確実なことは言えないが、世界の不安定化が大きくなる中で、「東京会議」と並び、中国との対話を継続する意義はあまりに大きく、その合意が大きな課題となっている。
さらにそれと並行して、北東アジアの紛争回避や平和の枠組み構築に向けて、米中が同じテーブルに座るという歴史的な作業である、日米中韓の4カ国間会議である「アジア平和会議」も9月に開催され、それと並行して、日米、日中、日韓の安全保障会議も開催されることになっている。
私たちのこうした民間外交は、日本や海外で多くのメディアに取り上げられ、世界的にも注目されるに至っている。
ただ、こうした対話をこれからも言論NPOが安定的に開催し、その競争力を高めるために、それを運営する事務局体制や、言論NPOの組織自体の強化が不可欠となっている。
言論NPOの組織体制の強化について
言論NPOの組織体制は、まだ脆弱で多くの課題に取り組むという点で、事務局体制の強化は不可欠となっている。
事務局体制の機能強化として、国際部と組織部の計3名の採用を検討しているが、その他のボランティア体制も充実する必要がある。
また、コンプライアンス委員会を再組織するほか、副理事を含めた理事会体制の強化も課題になっている。
さらに、多くの会議や研究会のメンバーにも若手や女性を意欲的に採用することにしており、次の世代に繋がる取り組みに着手している。