2013年参議院選挙 マニフェスト評価(財政政策)

評価の視点

日本の財政は、現状の国際比較においても、過去の歴史に照らしても、極めて悪化した状態にある。しばしば、日本国債の多くの部分が国内で消化されており、我が国は経常黒字国であるという言い方がなされるが、民間経済が貯蓄超過となって活性化せず、民間貯蓄が民間の投資ではなく政府の資金不足に充てられている状況それこそが財政の持続性を損ねている。

さらなる高齢化が見込まれる我が国において、財政改革による財政健全化の方策を具体的に提案することは、国政選挙における重要課題の一つとされなければならない。特に、長期のデフレからの脱却(人々のインフレ予想の醸成)を目指す中では、インフレ予想や日本国債の信用力が反映される長期金利の安定性を確保する必要性が高く、財政運営には高度な戦略性が求められる。また、未曾有の超高齢社会を迎える中では2014年度からの消費税率引上げをはじめ、ここ数年における「社会保障と税の一体改革」を進展させるという視点も不可欠である。

以上の点を踏まえ、①そもそも財政に対して問題意識が十分にあるか、②財政問題を経済政策や社会保障制度改革と有機的に結びつけた政策を打ち出しているか、③適切かつ実効性のある具体的目標(歳出効率化、税制改革、収支改善など)について国民との約束を示しているか、④予算編成の手法等に関して、新規性のある提案がなされているか、⑤短期的ではない中長期的な観点からの政策の体系となっているか、といった諸点をマニフェスト評価における視点とする。

自民党

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公明党

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民主党

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日本維新の会

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みんなの党

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共産党

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社民党

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生活の党

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みどりの風

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【 評価点数一覧 / 自民党 】

 

項 目

自民党

形式要件

(40点)

理念(10点)

4

目標設定(10点)

4

達成時期(8点)

4

財源(7点)

0

工程・政策手段(5点)

1

合計(40点)

13

実質要件

(60点)

体系性・課題抽出の妥当性(20点)

9

課題解決の妥当性(20点)

8

政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)

4

合計(60点)

21

 合 計

34


【評価結果】自民党 マニフェスト評価   合計 34 点 (形式要件 13 点、実質要件 21 点)

【形式要件についての評価 13 点/40点】

自民党は、国・地方のプライマリーバランスについて、赤字の対GDP比を2015年度までに2010年度比で半減させ、2020年度までに黒字化し、その後も債務残高の対GDP比の安定的な引下げを目指すとしている。これは、国際公約とも言われる民主党政権のときの目標、さらに遡ればリーマンショック後の不況下で麻生太郎内閣が設定した目標を引き継いだものである。

この財政健全化目標は、政府が6月14日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」でも明記されている。骨太の方針では、目標達成に向けた取組内容を具体化した「中期財政計画」を早期に策定するとしており、具体的な手段は明確にされていない。ただし、基本方針として、2015年度の目標達成に向けて歳出面では義務的経費を含めて踏み込んだ見直しを行うとされ、2020年度の黒字化に向けては歳出と歳入の乖離を着実に解消していく、としている。

ただ、今後、歳出削減や負担増など、国民に不人気の政策を実施していく必要があるとすれば、本来、その具体論や選択肢を今回の参議院選挙における公約の俎上に載せるべきだと我々は考える。特に、今回の選挙結果によっては、これから3年間、国政選挙が行われない可能性が高く、今回争点化されない限り、財政再建については、国民は判断を政権に一任せざるを得なくなる。少なくとも、2014年度からの消費税率引上げを行うかどうかの言及が必要だった。また、骨太の方針では社会保障支出についても聖域としないことが述べられているが、自民党「参議院選挙公約2013」では、社会保障制度改革国民会議(8月21日が設置期限)の審議結果等を踏まえて、医療制度、介護制度、年金制度などの社会保障制度について必要な見直しを行う、と述べられるにとどまり、これも言及を避けている。

社会保障以外の歳出削減に関しても、「「真の行政改革」を推進し、国民に信頼される質の高い行政を実現」「国・地方の役割分担の再検討、業務の見直し等を徹底し、省庁再々編も視野に入れた中央省庁改革を、政治主導で実行」「公務員制度改革を断行」「地方分権を推進するとともに、道州制の導入を目指す」など、行政改革に関する定性的な記述が目立ち、事後に測定できるような数量的効果の見通しは明確にされていない。


【実質要件についての評価 28 点/60点】

自民党「参議院選挙公約2013」では、いわゆるアベノミクスといわれる「3本の矢」を一体的に推進する下で、経済再生が財政健全化を促し、財政健全化の進展が経済再生の一段の進展に寄与する姿を目指すとしている。経済と財政の相互作用を意識した課題設定は、経済と財政の両方のバランスをとりながら現実的な目配りをしていることを国民や市場に示す効果がある点で好ましい。

同党の公約では、思い切った投資減税等によって企業の設備投資を促す、拡大する国際市場の需要を獲得する戦略を展開するなどとしており、民間部門の貯蓄超過状況を解消に向かわせようとしている。こうした成長戦略は、マクロ的にみて財政健全化政策としても意義のある整合的なものであり、一定の評価ができる。

他方、国土強靭化政策の推進においては、従来のような雇用維持や所得分配を主目的としたバラマキ型の公共事業の拡大とならないか強く警戒する必要がある。ただ、財政資金に強い制約がある中、資金需要が高まると見込まれる社会資本の整備・更新等について民間の資金や知恵を活用すると述べ、PPP/PFIの事業規模を10年間で12兆円(現状4.1兆円)に拡大することを、数字を含めて公約していることは、課題解決の妥当性や指導性の観点から評価できる。

社会保障制度については、自民党は「自助」「自立」を第一とし、税や保険料の負担者の立場に立って「共助」や「公助」を組み合わせるとしている。ここからは、社会保障制度を効率化し、保険料や税の負担を過度には引き上げないというメッセージがある程度伝わってくるが、こうした理念の面での他党との違いがより分かりやすく示されることが望ましい。財政健全化と社会保障制度の持続可能性確保のための各党の考え方が、有権者に正しくかつ充分に伝わることが、課題解決の実効性を高めることになると考えられるからである。


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【 評価点数一覧 / 公明党 】

 

項 目

公明党

形式要件

(40点)

理念(10点)

0

目標設定(10点)

0

達成時期(8点)

0

財源(7点)

0

工程・政策手段(5点)

0

合計(40点)

0

実質要件

(60点)

体系性・課題抽出の妥当性(20点)

0

課題解決の妥当性(20点)

0

政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)

0

合計(60点)

0

 合 計

0


【評価結果】公明党 マニフェスト評価   合計 点 (形式要件 点、実質要件 点)

【形式要件についての評価 点/40点】

公明党「参院選重点政策」は政治の「安定」をキーワードとしており、年金・医療・介護・子育て支援等の充実に取り組むことを基本理念の一つとしている。具体的施策として、①小学校就学前3年間の幼稚園・保育所・認定こども園等の幼児教育の無償化を実現する、②高額療養費制度について70歳未満の年間所得300万円以下世帯は負担上限を月額8万円から4万円に引き下げる、③低年金・無年金対策の一層の拡充、などが掲げられている。

しかし、これらはいずれも財源が必要な措置であるにもかかわらず、その財源の裏付けが明確でない。「参院選重点政策」は「財政健全化に着実に取り組む」「予算のムダを削り、真に必要な政策のために税金を使えるようにします」と述べているが、その具体的内容はほとんど明らかにされておらず、さらに財政再建の目標すら言及していない。


【実質要件についての評価 点/60点】

公明党の「参院選重点政策」は「生活者の政策の実現で、実感できる国民生活の向上を果た」すとしている。経済のグローバル化が進み、産業が多様化する中、超高齢社会である我が国においては、できることならば政府が整備した方がよい生活者支援は無数にある。

しかし、人々の価値観の多様化や財源の制約を踏まえ、優先すべき政策を民主主義のプロセスを通じて取捨選択することが政治には求められている。与党である政党が財政改革や財政再建に関して、目標、手段、問題解決に向けた体制や指導性について何ら明らかにされていないのは問題であり、最低評価にせざるを得ない。

なお、これは自民党の公約も同様だが、与党として、選挙後に政府が判断することになる消費税の導入については、その判断を公約で言及すべきである。こうした言及がないのに消費税の10%の引き上げ時の軽減税率導入については、「当面する重要政治課題」では説明されており、有権者への説明として極めてあいまいである。

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【 評価点数一覧 / 民主党 】

 

項 目

民主党

形式要件

(40点)

理念(10点)

2

目標設定(10点)

1

達成時期(8点)

4

財源(7点)

0

工程・政策手段(5点)

2

合計(40点)

9

実質要件

(60点)

体系性・課題抽出の妥当性(20点)

3

課題解決の妥当性(20点)

4

政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)

0

合計(60点)

7

 合 計

16


【評価結果】民主党 マニフェスト評価   合計 16 点 (形式要件 点、実質要件 7点)

【形式要件についての評価 点/40点】

民主党は、与党時代である2010年以降、2015年度プライマリーバランスGDP比赤字半減(2010年度比)、2020年度黒字化の目標を掲げておりが、民主党「Manifesto」においてはそれを踏襲することを明らかにしている。この意味では政策に一貫性があるが、目標達成のための手段としては「歳出改革」「成長戦略」「歳入改革」の3本柱で取り組んでいくことを内容とする「財政健全化法」を制定だけしか提示しておらず、具体性に欠ける。

特に、民主党が2012年に主体的に取り組んだ「社会保障と税の一体改革」を仕上げていくための公約が示されておらず、「子どもから高齢者にわたる、持続可能な社会保障制度を構築します」という一般論にとどまっている。また、「一律に社会保障費をカットしません」と述べるほか、消費税の引上げの影響を緩和するための措置を講じるとしているなど、財政健全化への取り組みが見えにくい記述となっている。


【実質要件についての評価 点/60点】

民主党「Manifesto」は「民主党の原点は、政治・行政の硬直的な制度や、癒着構造を正すこと」「行政のムダを排し、地域への権限移譲を進め、身を切る政治改革を実行する改革政党」と述べている。これらが実行されることは財政改革そのものであり、結果として財政を健全化へと向かわせる可能性があるが、課題が並べられているだけで、具体的な政策体系として打ち出されていない。

個別論点をみると、議員定数を衆院80、参院40程度削減、独立行政法人や公益法人への予算交付等を見直す「行政改革実行法」等10本の行革関連法の制定、国家公務員人件費の2009年度比2割削減といったことが掲げられている。また、社会保障制度に関してManifestoでは、最低保障年金の創設を中心とする民主党の年金制度改革案の実現を目指す、税金と社会保険料をまとめて扱う歳入庁を設置するなどが公約とされている。ただ、適切かつ具体的な目標がないために、それらがどう財政再建に寄与するものか判断できない。また、急増する社会保障関係費に対する言及もなく、これを包括した財政再建の考えを党として持っているのかを有権者が判断できず、高い評価を加えることができない。

また、野党としてこれらの政策を今後どう実行にこぎ着けようとしているのかという点での、フィージビリティを有権者に信認させるだけの政党ガバナンスや指導性、政治戦略が読み取れない。民主党が昨年まで与党であったことや現在の参議院で多数派を形成していることを踏まえると、今後の政党政治を成熟させていく観点からもより実効性のあるマニフェストを掲げる責任感が感じられない。

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【 評価点数一覧 / 日本維新の会

 

項 目

日本維新の会

形式要件

(40点)

理念(10点)

3

目標設定(10点)

1

達成時期(8点)

0

財源(7点)

1

工程・政策手段(5点)

1

合計(40点)

6

実質要件

(60点)

体系性・課題抽出の妥当性(20点)

3

課題解決の妥当性(20点)

3

政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)

0

合計(60点)

6

 合 計

12


【評価結果】日本維新の会 マニフェスト評価   合計 12点 (形式要件 点、実質要件 6点)

【形式要件についての評価 点/40点】

日本維新の会「参議院選公約」では、現在の財政構造は維持不可能と述べられ、社会保障給付費が大きく増加しているため改革が必要という現状認識が示されている。また、財政だけに着目するのではなく、財政金融一体のマクロ経済政策を実施する旨、述べられている。

ただ、プライマリーバランス黒字化の目標設定、財政運営中長期戦略の策定、公会計制度改革等について法案提出という手法が示唆されているものの、その具体的内容(手段や工程、期限など)は示されていない。

他方、法人税や所得税等の大胆な引下げといった一義的には歳入減となる政策を強く打ち出しており、それと財政問題との関係が十分明確にはなっていない。社会保険料や所得税の公平公正な徴収、年金目的の特別相続税の創設など増収策も掲げられているが、その実効性を評価できる情報は示されていない。特別相続税については、税率10%が例示されているが、10%でも2兆円の税収にすぎず、これが現在の年金問題に十分なインパクトがあるとは考えにくい。


【実質要件についての評価 点/60点】

日本維新の会「参議院選公約」では、財政の収支尻ではなく「税と社会保障制度改革」を大きな柱に据えている。財政問題の帰趨は、社会保障制度の今後の運営や税制改革の行方に大きく依存するという点では正しい捉え方だと思われる。

また、地域政党に起源がある同党らしく、消費税の地方税化と新たな地方間財政調整制度(地方共有税)の創設が掲げられている。財政問題は社会保障制度に加えて、国と地方の財政関係をどうするかが最重要のポイントの一つである。

こうした社会保障制度の運営と、国と地方の財政の改革・再建をどう進めようとしているのか、公約では明らかにされておらず、財政再建の道筋を提起できていない。あるいは、財政再建に向けて実行力を予想させる体制の確立が提案されているとは到底言えない水準の記述にとどまっている。


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【 評価点数一覧 / みんなの党 】

 

項 目

みんなの党

形式要件

(40点)

理念(10点)

5

目標設定(10点)

3

達成時期(8点)

0

財源(7点)

2

工程・政策手段(5点)

3

合計(40点)

13

実質要件

(60点)

体系性・課題抽出の妥当性(20点)

4

課題解決の妥当性(20点)

4

政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)

4

合計(60点)

12

 合 計

25


【評価結果】みんなの党 マニフェスト評価   合計 25 点 (形式要件 13 点、実質要件 12 点)

【形式要件についての評価 13 点/40点】

「みんなの政策アジェンダ2013」では、財政健全化について優先順位を示しているのが特徴である。すなわち、増税の前に、①国会議員や官僚が身を切る、②国有資産の売却と埋蔵金の発掘を行う、③歳出の中身を改革する、④経済成長を通じた税収拡大を図る、などの政策を実施すべきとされている。歳出削減に重点を置いた財政健全化を強く打ち出している点は、評価すべきポイントと私たちは考える。復興増税を伴った復興予算について、その使途に不適切なものがあるとの指摘があるように、財政健全化においては歳出の評価と監視が非常に重要である。

①については、例えば国会議員定数の4割削減や、2年限定とされている国家公務員給与の7.8%カットを恒久化することなどが示されており、一定の具体性がある。②については、例えば、特別会計の積立金や剰余金の取崩し、政府保有株式の売却などが、具体的な金額とともに示されている。③については、公共事業の採択にあたって第三者機関が費用便益分析を行って採算性が認められないものは着工しない、地方へのひも付き補助金や地方交付税を道州制導入に伴って廃止するなどとしている。

もっとも、国会議員や官僚が身を切る改革は、政治的な意味は大きいが、現在と将来の財政赤字の大きさに照らすと十分な歳出削減規模とはならない。仮に、当該アジェンダで述べられている地方公務員の人件費の2割削減ができれば小さくはないが、それについては地方自体体主導で行うと述べられるにとどまっている。また、特別会計等がもつ資産の活用も、それが可能なのは基本的には1回限りである。

一方、成長戦略の一環として、税制特別措置を抜本的に見直すとしつつではあるが、法人税の実効税率を20%へ減税するとしている。実効税率20%は国際的にみても、先進国としてはかなり低い税率となり、日本を本拠とする企業の競争力向上に一定の効果があると考えられるが、減税財源が不明確である。

さらに当該アジェンダは、持続可能な財政運営を確保することを目的とした法律を制定するとしているが、上記のような政策の組み合わせを、どのような時間軸で実施していくのか必ずしも明確でない。2014年4月の消費税増税は凍結するとしており、それによる予定された政策の財源への配慮はみられない。

また、当該アジェンダは、名目4%以上の成長が可能であり、それが実現すればプライマリー収支が改善して消費税率を引き上げる必要はない旨述べている。ただ、ここには①どのようにしていつまでに名目4%以上の成長を達成するのか十分に示されていない、②名目4~5%の経済成長が実現すれば、それに連動して政府の名目歳出も増える部分が少なからず出てくるが、増税が不要であるほど収支が改善する定量的な説明が示されていない、などの問題がある。

財政運営の手法として、歳入庁の設置、米国議会会計検査院型の強力な会計監査機関を国会に設けムダを徹底的に排除するなどの政策を掲げている点が注目できる。


【実質要件についての評価 12 点/60点】

財政政策において「みんなの政策アジェンダ2013」の象徴は消費増税の凍結である。「私たちも将来的な増税を一切否定するわけではありません」と述べられているように「凍結」は「撤回」や「中止」と意味が異なるが、いずれ消費税をどうするのかについての提示がない点は不誠実である。

他方、名目4~5%の成長を実現させれば消費税増税は不要との趣旨も述べているが、それは「増税の前に行うことがある」とした公約と矛盾をはらんでいる。政府支出の効率化は増税の有無とは関係なく正しい政策と言え、終わりのない不断に続けるべき課題である。すなわち、「増税の前に行うことがある」という論法は、結局は必要な国民負担増の検討と実行を忌避する抗弁であり続けており、それが現在の財政問題を招いているとの問題意識に応えるものにはなっていない。

現在の財政構造に照らすとその規模からいって社会保障費をどのようにしていくかが最大の課題の一つであるはずだが、当該アジェンダは社会保障費以外の歳出について公約が多い一方、社会保障費の増加抑制についての公約が少ない点で包括的でない。社会保障制度については歳入庁の導入によって保険料の徴収確保が実現できるとされるが、それによる給付拡大までを考えれば(社会保険においては、保険料負担と給付には一定のリンクの関係が当然にある)制度持続性への貢献度合いは不明である。健康保険料や年金保険料の標準報酬上限撤廃によって公費負担分を保険料(高所得者や企業の負担)に付け替える公約もみられ、社会保険と財政(再分配)の関係がどう整理されているのか分かりにくい。

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【 評価点数一覧 / 共産党 】

 

項 目

共産党

形式要件

(40点)

理念(10点)

2

目標設定(10点)

0

達成時期(8点)

0

財源(7点)

2

工程・政策手段(5点)

0

合計(40点)

4

実質要件

(60点)

体系性・課題抽出の妥当性(20点)

4

課題解決の妥当性(20点)

0
【旧管理ID: 8597】