ロシアによるウクライナ侵略直後に、世界10ヵ国の民主主義国のシンクタンクの代表者やオピニオンリーダーと共に、侵略行動への民主主義国の対応、国際秩序の再生、台湾問題について議論を行いました。
2017年の設立から6回目となる「東京会議」は、世界10カ国のトップシンクタンク代表を集め、東京の会場をハブに2022年3月14日にオンラインで開催されました。
「東京会議」は、世界で「自由」と「民主主義」、「多国間主義」、という戦後の世界秩序を支えてきた規範が厳しい状況にある中、2017年に国際論壇に影響力を持つ有力シンクタンクの協力の下、設立された国際会議です。
2022年の「東京会議」は、その開催の約3週間前にロシアがウクライナを侵略し、これまでの秩序や国際安全保障環境がかつてないほど緊張する中、行われました。ロシアの侵略行為に反対する民主主義国10ヵ国のシンクタンクの代表者が集まった他、アジアの安全保障の専門家など含め約20名が登壇し、世界が注視する喫緊の国際問題である「ロシアの侵略行動に世界はどう対応するか」、「瀕死の国際秩序をどのように再生させるのか」、「台湾は第二のウクライナになるか」について議論を行いました。
ウクライナ侵略直後に、最も影響力のある民主主義国10ヵ国のオピニオンリーダーが集まった「東京会議」は、世界的なアジェンダを日本で議論し、日本から発信する唯一のハイレベルな議論の場として、約1,100名が視聴し、多数のメディアで報じられるなど日本内外で大きな注目を集めました。
ウクライナ侵略後はじめての国際会議の場で、G7の結束の重要性を訴えた岸田総理
日本からは、オープニングにて岸田文雄・現内閣総理大臣が参加。ロシアによるウクライナ侵略後、初めて国際会議の場で講演した岸田総理は、この「東京会議」の場を活用し、会議に参加した世界の識者に対して、「ロシアに国際社会が毅然と対応し、国際秩序の根幹を守り抜けるのかが、ポスト冷戦期の次の時代を占う試金石だ」と訴えました。その上で、日本は、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値をより一層重視し、共有するパートナーとの結束を強めるとの姿勢を鮮明にしました。この他、このウクライナ情勢への対応についてのG7や国連における緊密な連携ぶりについて説明し、日本の外交・安全保障の観点についても触れるなど世界10ヵ国の有識者を前に、日本の立場を重ねて伝えました。
岸田総理に続いてスピーチを行った、クレーメンス・フォン・ゲッツェ駐日ドイツ大使は、2022年のG7議長国のドイツ政府を代表し挨拶を行い、ルールに基づく秩序の確立に貢献してきた民主主義国は、言葉と行動によって秩序を守る必要があると伝えました。
これらの講演を受けて始まった第1セッションでは、「ロシアの侵略行動に世界はどう対応するか」をテーマに議論を行いました。冒頭、司会を務めた工藤は、「暴力により一方的に現状変更が容認されるなら国際秩序の土台が崩れる」と断じ、参加者からも核を持つ大国の横暴への懸念や国連憲章の堅持を主張する声が相次ぎました。その一方で、10ヵ国の参加者からは、ウクライナでの戦争が長期化し、外交で出口を見出すのが難しいこと、また欧米の連帯自体の継続性についても厳しい見方が示されました。また、ロシアを孤立させるという西側の取り組みや制裁も効果的に進んでいない点も指摘されました。

続けて行われた第2セッションは、「台湾は第二のウクライナになるのか」をテーマに、中国と日本の外交・安全保障の専門家も交え議論しました。ウクライナ侵略後に、同じ大国の軍事的圧力にさらされる台湾とウクライナの類似性を指摘する声が多く出ましたが、この点については、参加した中国の元軍幹部は「2ヵ国は根本的に異なる」と明確にこの点を否定。その一方で、台湾の平和統一が「完全に不可能」と見なされた場合、中国は武力行使するとも断じました。10ヵ国のパネリストからは、台湾有事が起こる可能性は、台湾が独立に向けて具体的行動を起こさない限りは可能性が低いという声が多数でしたが、他方で、中国・台湾の隣国である日本のパネリストから出された声は、さらなる抑止力の構築とアメリカが(対台湾)曖昧戦略を転換すべきとの意見でした。この点について、米国のパネリストは、「戦略的曖昧さは不変ではない」と伝えました。
2つのセッションを受けて、最後にどのように瀕死の国際秩序を再生させるべきか、第3セッションで議論が行われました。ここでは、まず、ウクライナ戦争によって既存の秩序や地政学的情勢が大きく覆ったとの認識の下、「ポスト冷戦」に続く新しい秩序に向かっているとの考えが示されました。多くのパネリストは、ポスト・ウクライナ戦争の世界として、世界経済の分断がさらに進み安全保障の色合いが濃くなること、国際的な公共財の維持やルール作りがより困難になること、さらに現在は強固であるが西側の結束にも緩みが生じる可能性について強い懸念が示されました。これに対し、一部のパネリストからは、分断される世界にあっても中国やインドを何とか国際協調の場に引き出し、グローバル・ガバナンスの強化を図るべきとの意見も出ました。
最後にこれらの意見を総括した上で、ウクライナ侵略という前例のない危機に直面した国際社会がいかに結束を維持し、ルールに基づく秩序を維持、改善させるか―普遍的な価値や国際秩序の維持にこれまで貢献してきた先進民主主義国家のさらなる努力が求められていることを確認しました。
