「東京会議」評議会主催 朝食会
評議員9名が、ゲストスピーカ・シンクタンク代表等と意見交換

 午後の公開フォーラムに先立つ3月14日朝、「東京会議」評議会主催の朝食会が行われました。

 この評議会は、「東京会議」の戦略的な方向性や、世界的な課題にきちんと見合うための論点等を「東京会議」の実行委員長に提言するために組織されていますが、今回の朝食会はその評議会も兼ねており、評議員9名が出席。藤崎一郎氏(元駐米大使、日米協会会長)による司会進行の下、ゲストスピーカーや10カ国シンクタンクの代表者らと意見交換をしました。


 その冒頭、開会挨拶に登壇した清水博氏(日本生命保険相互会社代表取締役社長 社長執行役員)は、「私が今、特に懸念しているのは、米中関係が悪化する中、日本の存在感が低下していると感じることだ」と切り出しつつ、「経済においては、日本にとって米国も中国も重要な貿易相手国であり、両国へ一定の発信力を持つ日本こそが、世界に対して大きな役割を果たす時に来ている」と指摘。不確実性が高まる世界において、2024年の世界はどうなるのか、その中で世界は日本に何を期待しているのか、参加者間での率直な意見交換を求めました。


 続いて、10カ国シンクタンクの中から三氏が問題提起をしました。最初に登壇したジェームズ・リンゼイ氏(米国・外交問題評議会(CFR)シニアバイスプレジデント)はまず、「私たちの地平線には四つの嵐が迫っている」と切り出し、その一番目である「米中対立」については、現状両国は緊張を戦略的に一時停止しているものの、そこに合意があるわけではなく、すぐに対立が再燃する危険性はあると懸念。台湾や南シナ海、北朝鮮をめぐる対立がより大きな緊張を生み出す可能性を指摘しました。

 二番目としてリンゼイ氏は、「中東でより広範囲の戦争が起きる可能性」を挙げ、そこではヒズボラやイランの動向を注視すべきとしました。

 三番目には「ウクライナ戦争の先行き」を提示。激しい消耗戦が続く中で、米国のウクライナへの支援が滞ることはロシアの攻勢につながり、それは結局欧州全域に大きな影響を及ぼすことになると警鐘を鳴らしました。

 最後の四番目には自国米国の「大統領選挙」を挙げました。米国の外交政策は米大統領選の争点とならないものの、選挙の結果は外交政策に大きな影響を及ぼすとしたリンゼイ氏は、とりわけドナルド・トランプ氏が当選した場合、高関税政策やウクライナへの支援打ち切り、NATOからの離脱、イスラエル支援強化などによって「米国の終焉を招くだろう」と強く懸念しました。

 こうした状況を踏まえた上で、2024年の日本に対しては、「この荒波によって、一年後に世界地図が激変している可能性に備えることだ」と忠告。もっとも、現状の日本政府は、米国の外交政策担当者たちが求めている通りの方法でウクライナを含む多くの問題に立ち向かっているとも評価しました。






 続いて登壇したステファン・マイヤー氏(ドイツ・国際政治安全保障研究所(SWP)ディレクター)はまず、「2024年は選挙と戦争に注視すべき。この二つの要素は密接に関連している」と切り出しました。ウクライナ戦争では、攻勢を強めるロシアのプーチン大統領は、米大統領選でトランプ氏が当選すればウクライナへの支援が減ることを期待している一方で、ゼレンスキー大統領はバイデン大統領の再選後の支援拡大によって反転攻勢に出たいと考えていると分析。ガザ紛争でもイスラエルのネタニヤフ首相は、「トランプ氏勝利によってガザでのフリーハンドを得られると考えている」との見方を示しながら、米大統領選が二つの戦争の帰趨に大きく関わると指摘しました。

 マイヤー氏はさらに、戦火はこの二つの地域にとどまらず、アフリカや中東にも紛争地帯が広がっているとしつつ、難民の到来など欧州に及ぼす影響を懸念。米大統領選についても、それが貿易や気候変動、NATOの将来を占う上できわめて重要との認識を示しました。

 同時に、今年は欧州でも大きな選挙があることを紹介。6月の欧州議会選挙と、年内に予想される英国の総選挙の結果如何によっては、加盟国内で右翼ポピュリスト政党が勢いづく事態となることを憂慮しました。


 最後にサンジョイ・ジョッシ氏(インド・オブザーバー研究財団(ORF)理事長)が登壇。「民主主義は、非常に深い政治的亀裂によって内部から引き裂かれている。この分裂は言説の分裂となり、対立する双方は対話をしておらず、それが私たちのいる世界の状況をも根本的に規定している。国家内でも国家間でも二極化が進んでいる」と切り出したジョッシ氏は、世界各地で大きな選挙が行われる2024年はこうした状況をより悪化させかねないと警鐘を鳴らしました。

 その上でジョッシ氏は、こうした状況の中での日本の役割について発言。国連に限らず、多くの多国間機関内でも深い分断が生じている中で、「こうした分断を乗り越える架け橋となることが日本の役割だ」と主張。ルールに基づく国際秩序の修復が求められる中では、平和国家として知られ、常に人道主義に立脚し、先進的な技術も有する経済大国である日本には、「他の国にはない多くの強みがある」と強い期待を寄せました。


 問題提起の後、意見交換に入りました。出席した参加者からは、貿易や開発、安全保障、地域の安定化といった様々な課題において、日本が世界やインド太平洋地域の中で果たす役割は大きいとの発言が相次ぎました。また、欧米各国とは異なり、日本はアフリカや中東諸国と歴史的なしがらみがないことから、こうした地域で西側との架け橋となるような役割を担うことに期待する意見が寄せられました。

 一方で、ASEAN各国の意識調査を基に、「日本は『信頼できる国はどこか』という設問では米中よりも信頼度が高い。しかし、『影響力がある国はどこか』という設問では中国よりも大きく劣っている。つまり、友人ではあるが、頼れるような存在ではないということだ」という指摘もありました。


 最後に、評議員を代表して閉会挨拶を行った田中達郎氏(アポロ・グローバル・マネジメント日本法人会長)は、議論を受けて、「日本は単なる良き友人ではなく、実行力と発言力のあるグローバルパートナーにならなければならない。そのために日本自身ももう一段レベルアップしていく必要がある」と総括。この後、公開セッションが行われる「東京会議2024」に対しても、「世界からインフルエンサーとして評価されるような議論を展開してほしい」と求めつつ、朝食会を締めくくりました。