【追悼・動画公開】10月22日に逝去された福田康夫元内閣総理大臣が最後に登壇した「第19回東京-北京フォーラム(2023)」の基調講演を公開します

 10月22日に逝去された福田康夫元総理は、2010年から13回にわたり「東京-北京フォーラム」にて基調講演いただき、15年からは最高顧問としてフォーラムを支え続けていただきました。
 最後にご登壇いただいた2023年の北京での基調講演で福田元総理は、「世界の対立と緊張を緩和し、分断を回避し、協調と協力の平和な世界をつくる」ためには、「政治指導者の大局的判断と行動が必要なこと」であり、「世界の平和のために協力し合うことが日中の共通の責務であるとの認識は、決して脇に置くことはでき」ないと主張しました。
 私たち言論NPOは、こうした遺志を受け継ぎ、今後も日中両国の相互理解と信頼醸成に努めるとともに、アジアの平和と安定に向けて、民間対話を再開させていきます。
 福田氏の長年にわたるご功績とご尽力に改めて深い敬意と感謝の意を表するとともに、ご冥福を心よりお祈り申し上げます。

 2023年10月19日に北京で行われた福田元総理の最後の登壇のスピーチを公開しますので、ぜひご覧ください。
 動画はこちらからご覧いただけます

世界の平和のために協力し合うことが日中の共通の責務

-「第19回東京-北京フォーラム」基調講演(2023年10月19日)-
福田康夫(元内閣総理大臣)




 ご在席の皆様、「東京―北京フォーラム」が本日、4年ぶりに対面形式による直接対話を再開できましたことを大変嬉しく思います。
 この3年間、世界は引きこもり状態の内向き指向になりました。交流もなく、その結果相互理解が大きく損なわれてしまいました。相手の顔を見つめ、その場の雰囲気を感じながら、真剣な対話を進めることによって相互理解と信頼は深まります。久方ぶりに対面で行われる今回の「東京―北京フォーラム」が、空白とそれに伴う不信を解消する大きな成果を上げることを期待しております。





世界全体の視野に立って現実に向き合うことが、日中両国が取り組むべき課題


 昨日、第3回一帯一路国際協力ハイレベルフォーラムが、盛大に開催されたことをお慶び申し上げます。そしてこの壮大な構想を提示された、習近平主席に対し、改めて敬意を表したいと存じます。一帯一路の国際協力は、習近平主席が10年前に提起された人類運命共同体構想の理念を実現するための具体的方策と理解しております。習近平主席の、人類は運命共にする共同体であり、1つの大きなファミリー (大家庭) となるべきであるとのお考えに私も賛同してまいりました。
 その理念は、開放と寛容 (包容)、公平と正義、調和(和諧)と共存、多元と互鑑、団結と協力であり、そして何よりもすべての前提としての平和の実現にあります。

日中平和友好条約の原点に戻ることこそ、日中関係の最大の課題


 ご在席の皆様、本年は日中平和友好条約締結 45周年の記念すべき年です。1978年10月23日、日本の総理官邸において、私の父であります福田赳夫総理と、訪日された鄧小平副主席の立ち会いの下で、園田直外務大臣と黄華外交部長が批准書を交換し、その瞬間をもって日中平和友好条約が発効しました。
 そのとき、福田総理と鄧小平主席が思わず抱き合って喜びを分かち合ったその光景を、近くに居た私も目撃しました。感動的な場面でした。日本と中国の間に、平和、友好、協力という柱が、条約という最も強い国際約束のかたちで打ち立てられたのです。その後の日中関係は、順調に推移し、経済交流や、それに伴う人的交流を拡大強化し、中国経済は飛躍的発展の中で今世紀を迎えました。
 ところが、その後中国が日本の経済規模を超えた2010年以降、日中平和友好条約の精神と原則から遊離するような現象が目につく残念な状況が双方で表れ、今に至っています。
とは申しながらも、本来の平和、友好、協力の関係を維持、発展させることは、隣り合わせる大国同士の日中両国にあっては正しい選択であることは勿論で、両国の大局的な利益にも合致します。このことは日中両国の、アジアひいては世界に対する責務でもありこの基本的立場を放棄することは、決して許されるものではありません。
 2008年の日中共同声明・第四の文書において戦略的互恵関係を打ち出したのも、この基本的立場を堅持していこうという意志の表明でありました。日中平和友好条約の原点に戻ること。これが、今日の日中関係の最大の課題であり、直ちに取り組むべきことであります。

世界の平和のために協力し合うことが日中の共通の責務


 翻って世界を眺めれば、世界は混迷の度合いをますます深め、対立と分断に向かい続けているかの如き現状にあり、憂慮に堪えません。世界の対立と緊張を緩和し、分断を回避し、協調と協力の平和な世界をつくる。
 そのためには何よりも政治指導者の大局的判断と行動が必要なことは申すまでもありません。昨年この場で同じ事を申し上げました。再度、強調しておきたいと思います。世界の平和のために協力し合うことが日中の共通の責務であるとの認識は、決して脇に置くことはできません。
 ご在席の皆様、45年前の日中平和友好条約が日中関係の基本的枠組みをつくり、平和、友好協力という日中関係の基本を定めたことに思いを致し、新たな時代の新たな日中関係の構築への歩みを進めてもらいたいと思います。何よりも重要なことは、日中の各層、各分野における対話と交流の恒常化であり、強化であり、深化であります。世界のなかに日中を置き、両国国民が正面から向き合い、手を握り合う関係をつくりあげたいものです。交流の拡大深化を通じ、お互いに幅広い相手の文化に直接触れ、理解し合い、尊敬し合う関係になって欲しいと思います。その中でも文化の重要性は、いくら強調しても強調しすぎることはありません。今回の「東京―北京フォーラム」は、それらのための重要なプラットフォームを提供しております。
 今回会合のご成功を確信し、私の挨拶を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。