2026年5月14〜15日、米国のドナルド・トランプ大統領と中国の習近平国家主席が北京で首脳会談を行った。両首脳は貿易摩擦の緩和や台湾問題、人工知能(AI)、中東情勢など幅広い課題について協議した。
今回の会談をめぐって、ワシントンと北京で取材するジャーナリスト3氏の見方に共通していたのは、米中関係が今後も構造的な対立関係にあることを前提に、両国とも「安定」と「競争管理」を求めているという認識である。会談後に示された「建設的戦略的安定関係」という表現についても、解釈の違いはあるものの、当面は競争を続けながら危機を管理する枠組みだとの理解でおおむね一致。いずれも米中対立そのものが解消されたわけではないという認識に立っている。
また3氏は、それぞれ事情は異なるものの、米中双方とも国内政治上の理由から対立の激化を望んでいない点でも認識を共有した。アメリカ側は中間選挙やイラン情勢への対応を抱え、中国側は党大会を控える習近平政権の安定運営が課題となっている。双方にとって、今は大規模な衝突を避ける利益が一致しているとの見方だ。
会談を通じて見えてきたのは、協力よりもまず安定を優先する現実主義だ。米中は依然として覇権を争うライバルだが、両国とも当面は競争を制御し、危機を回避する方向で歩調を合わせ始めたとの見方を各氏は示した。
参加者:川北省吾(共同通信編集委員)
河津啓介(毎日新聞中国総局長)
向井ゆう子(読売新聞ワシントン支局特派員)
司会者:工藤泰志(言論NPO代表)
I 両国で異なる受け止め方がされている今回の米中首脳会談
まず工藤は、今回の米中首脳会談が両国内でどのように受け止められているのかを尋ねた。
米中首脳会談をめぐり、中国とアメリカでは大きく異なる受け止め方が見られている。専門家らは、それぞれの国内世論や政治環境が会談の評価に影響を与えていると指摘した。
中国国内の反応について、河津啓介氏は「アメリカと中国が対等な関係になったという演出がなされていた」と述べた。河津氏は、トランプ大統領が初めて訪中した約8年半前にも北京で取材していた経験を踏まえ、「当時と比べると、中国国内ではアメリカはもはや仰ぎ見る存在ではないという意識が強くなっている」と説明。中国の有識者との対話でも、「米中は対等な関係だ」という認識が聞かれたという。さらに、そうした変化は習近平国家主席の指導によって実現された成果であるとのイメージが国内向けに発信されていたのではないかとの見方を示した。
一方、アメリカ国内の反応について向井ゆう子氏は、「今回の米中会談をどう見るかは、共和党支持者に聞くか民主党支持者に聞くかで答えが180度変わる」と回答。議会では民主党議員から会談への懸念の声が上がった一方で、共和党議員の多くはトランプ氏の対中政策を支持しているという。「ワシントンは非常に党派色の強い街であり、それぞれが異なるナラティブを発信している」と述べ、会談に対する評価も政治的立場によって大きく左右されるとの見方を示した。